人影らしきもの

令和になってすぐ実際に体験した出来事です。

いつも通り深夜1時に起床、2時から仕事なのですぐに出勤の準備をし
某エナジードリンクを1缶飲み干す。これが俺の一日のスタートだ。
今日は夜からずっと雨が降っており、
自転車通勤の俺は滅多に着ないカッパを着た。
そして日課にしている事がある。怖い話の朗読を聞くことだ。
雨ではあるが仕事先まで自転車で30分はかかるので、
テンションを上げる為に今日も朗読を聞きなが出勤した。
(もちろん音はなるべく小さく安全運転で)

自分はあまり道を覚えるのは得意ではなく、
通勤先へはなるべく簡単な道を選んでいる。
今日もいつも通りの道を走っていた。
雨なのでスリップをしないようにゆっくり漕いでいると、
いつも通ってた道が通行禁止になっている。
「この道しか知らないんだけどなぁ」
と呟いていると、通行禁止と書かれている横に右の矢印が書いてあり、
その先を見ると道が続いているようだった。

一度引き返して知ってるもう一つの道から行くのも考えたが、
時間もあまりないのでとりあえず右の道に進む事にした。
右の道に入ると街頭も無く真っ暗。
目の前の暗闇と知らない道に恐怖心が芽生えていた。
恐怖心と早く職場に行かないという焦りで、
とにかく知ってる道に出ないかと思いながら自転車を漕いでいた。

結構進んだと思うが周りは相変わらず真っ暗。
聞いていた朗読はいつの間にか止まっていて、
聞こえるのはザーザーという雨音だけ。
流石にこれ以上無暗に進むのはだめだと思い、
スマホでマップを開こうと思ったその時。
カランカランと鉄パイプが落ちた様な大きい音が右の方から聞こえた。
それに反応して右を見てみると、遠くの方に人影らしきものが目に入った。
普段はメガネの俺だが雨ということもあり、
その時はしていなくその人影らしきものが何なのかよくは見えなかった。
それよりさっきの音の方が気になり、
今日は風も強くもし鉄パイプが自分のとこに転がってきてしまったらと考え、
一度自転車から降り、音のした右の方を見た。

鉄パイプらしき物は見当たらなかったが、
気のせいか先ほどの人影らしきものが近づいているような気がした。
正直ビックリしたが先ほどはあまりよく見えなかったので、
今ならしっかり確認できるのではという好奇心からよく目を凝らして見てみた。
酔っ払い?の様な感じで体をくねくねさせながら前に進んでるようだった。
だが異常なまでの体の動かし方から一瞬人間なのか?と思ってしまった。
怖い話は大好きだが、幽霊を信じてはいない俺は
一瞬はこの世の者では無いと思ってしまったがすぐ、
まぁ深夜帯だしあんな人もいるだろうと思った。
そう思ったとしても気味が悪いので、とにかくその場から離れようと
また自転車に乗り少し前まで行って、
先ほど開こうとしていたマップを開いて現在地を確認した。

かなり道を外れてしまっていたようで、
これは遅刻確定だなと思いとりあえず職場に連絡しようとした時、
カランカランとまたあの音が鳴った。
少しビビったが通勤のお供である朗読を選んで再生しようと思ったその時。
イヤホンから「おい」という男性の声が聞こえて、
ビックリして後ろを振り向いたら髪の長い女性が後ろに立ってた。
あまりの異様な光景に声も全然出せず、
すぐに自転車に乗ってとにかく全力で漕いだ。
先ほどマップでは左にいけば
大通りに出れると確認していたので、そこを目指して。

わけもわからないままパニック状態だったがなんとか職場に到着。
仕事中も通勤の時の出来事が頭に離れずまともにできなかった。
それから仕事が終わり外も明るくなっていたので、
帰り道は特に何もなく家に着いて冷静に考えてみた。

あの時朗読を再生しようとする前に
男性の「おい」という声が聞こえたのではなく、
再生していて声が聞こえたのではと。
だが、その時聞いていた朗読には「おい」なんて言っているところは無かった。
それに後ろに立っていた髪の長い女性は一体何だったのかもわからない。

朗読: 怪談ロード倶楽部

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