壁の向こう側から

私の家はいわゆる心霊物件ってやつで、事故物件ではありません。
アパートの裏側にお墓があるってこと以外は結構立地がいいんです。
でもお墓があるってことは自然と霊現象も多くなるんで、
私もそこそこな霊感はついてしまっているんです。

だから小さいときから誰もいない場所から音がするのはもはや当たり前で、
せいぜい怖くても黒いひとがたのなにかを
家の中で見るぐらいのことだったら
「またか」とその程度で済まされていました。
そんな私が一番怖かった体験を書きます。

その日は夏休みも終盤を迎えていて
高校生の私は切りがいいところまで終わらせるために
夜中まで宿題をやって、ベッドに入りました。
けれど、私は寝付きが悪いのでしばらく携帯をいじっていたんです。
夜中の一時くらいになって、
「ヤバい、寝なきゃ」と思い、アイマスクをつけて寝始めました。

が、寝付きが悪いのでしばらくのあいだゴロゴロと寝返りをうち、
30分ぐらい経ったときに、私が寝ているベッドの上の大きな窓、
正確にはその窓にある格子を手で触る音がしたんです。
元々、その窓はアパートの二階に面していて廊下があるため
安全を考慮してかけられているんです。
当然アパートの二階の住人はいますが、生きた人間が通れば壁越しに歩く音、
振動などが伝わってくるはずですがそれがなかったんです。
それだけなら、私もいつものことで片付いたんですが、
その日は一回収まったらもう一回音がしたんですよ。
その事に多少驚きましたが、向こうに気づかれないために
私は寝たふりを続けたんですよ。

そうして寝返りをうったとき壁の向こうから
「……起きてるよね」とちょっと高めの女の子の声がしました。
その事に驚きを隠せなかった私が
飛び起きて窓を見ましたが誰もいませんでした。

これがちょっとのことでは驚かない私が
初めて心の底から怖かったと思った出来事でした。

朗読: 怪談朗読と午前二時
朗読: 怪談ロード倶楽部

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