猫の説教

30匹以上、うちに猫がいたことがある。
もちろん性格も一匹筒特徴的。
その中にあってもユニークな存在だったのが、ニャンズのボス猫の長男。
小柄な母猫からこんなでかいのが生まれるかという体格。
太っているのではなく、やたら体長が長いのだ。
しかも数ある猫の中でも有数なニャン格者。
とにかく温厚でほかの猫たちからも一番好かれていたんじゃないかな。

なにせ地震があった時など、まだ幼かった子たちは
自分たちの母猫のところに行かず、彼のもとに直行し、
出ないおっぱいを吸っていたほど。
それでも彼はちょっと困った顔をするだけで、ずっと子守をしていたほど。
そんな我が家にはエサが欲しい野良猫や、
飼い猫志願で突撃してくる子も多かった。

これだけ大所帯になると、猫たちものんびりしたもの。
知らない新入りが飯を食っても
「あれお前誰?まあいいや」って感じで平然としている。
そんな中で、その温厚な猫が激怒したことがある。

いつものような昼日向、またひょっこりと新顔が我が家を訪問した。
見ればうちのミックスニャンズとは明らかに違う、
純潔血統書付き、という感じの超美猫。
うちのお猫よし軍団は、ああまた誰か来たか、って感じでスルー。
我が家にあがりこもうとしたところで、
温厚な子が一まで聞いたこともないような勢いで唸り、
美猫を威嚇するではないか。
どうしたことかと唖然としながら、もう老猫の部類に入る子だけに、
けんかになっては困ると思い吹っ飛んでったらそこには驚くべき光景が。

普段はヌベートと寝転がっている子が、きりりと仁王立ち。
その前では美猫が半分驚いた顔、半分気押されたような顔でお座りしてた。
するとおもむろに、わが老猫何やら話し始めた。
「ニャごにゃごミャーミャー、にゃごにゃご」
…その姿はどう見ても美猫に説教をしているようにしか見えない。
しかも叱るかと思えば時に諭すように、
自手に豊富な声色を使いこなしながら、懸命に話している。
その間、美猫はじっと首を垂れて、
お爺さんのお説教を聞く孫のような姿で座り込んでいる。
なんとその時間、30分以上。

一通り話し終えると、爺さん猫は、
美猫の頭を優しくポンポンと叩いて、出ていくように促した。
後でわかったことだが、その子は我が家のある山の山頂の
同じく猫好き一家の大切なペットで、
普段は室内飼育で絶対に外に出たことのない子だったらしい。
慌てた飼い主が懸命に探し回ってたところ、ひょっこり何事もなく帰ってて、
一安心ということだったようだ。

どうやら老猫にはわかっていたらしい。
やさしい飼い主が心配していることが。
若い猫だけに好奇心旺盛で、
仲間がいっぱいいる我が家に遊びに来たかったんだろう。
しかし山の中は、危険がいっぱいである。
野生動物もいっぱいいて、うちの子も何匹か犠牲になったような場所。
ほっつき歩いてら危ないこと、
飼い主さんが懸命に探しているであろうことを滾々と言い聞かせたみたいだ。

でも本当に驚いた、猫にあれだけの話術があるとは…
しかも普段は無口で温厚なおじいちゃんだけに一層だ。
何かそれ以来、周りのニャンズたちもおじいちゃんを見直したみたい。

ちなみにその美猫、数回飼い主さん付きで我が家に遊びに来たが、
そのたびに一直線に向かっていくのはおじいちゃんのところだった。

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