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不動産投資にご用心

まあバブルのさなかから直後のこと、
不動産屋を経営している友人から、
いわゆる投資用マンションを買わないかという話が来た。
場所はといえばメインステーションから5分、
ただしよくあることだが表はまともな街、
裏は水商売と危ない奴の街の危ないほうにある物件だ、
まあ話だけでもというので、その友人の事務所へ行ってみた。

さっそくニコニコ顔で迎えてくれた友人が、
すぐに資料一式をそろえて持ってきた。
なんでも今の持ち主はやはり投資にはまったどこかの医者で、
ほかで穴をあけたから大至急うりたがっているという。
写真をさっそく見せられたが、まだ築5年程度で、痛みもそれほど来ていない。
そして中を見れば、8畳ほどのワンルーム。
これを5部屋まとめて買ってくれというのが条件らしい。
いくら売り急いでいるといっても、
そこそこの値段は吹っ掛けてくるだろうと思ったら、
なんとまとめて1500万だというではないか。
正直、心が動きかけた。
しかも各部屋とも賃貸に出していたが、
すべてが今は空き部屋になっているという。

ここで何かおかしいと思った。
いくらなんでもちょうど同時期に、
しかも通常引っ越しなどが多い季節でもないのに
纏めて空室になるというのはどう考えても変だ。
場所から言っても、賃貸に出せば月7-8万は取れる物件だし、
なんかの訳ありだろうとは想像がついた。
「じゃあ現物、見せてくれよ」というと、
友人はすぐに愛車のベンツのカギを取り出し現地へ。
確かに外観は写真で見た通り、そこそこ美しいし、デザインセンスも悪くない。ただ妙なのは真昼間というのに建物に活気がない。
生活感もなければ、事業所として利用しているとも思えない。
友人がすかさずエレベーターに乗り込み、目的の階へと案内してくれた。
これが最悪だった。

何か異常に湿気が多い感じがするし、外観以上に中が薄汚れて見えるのだ。
早速一部屋に入ってみて、すべてが理解できた。
堅気の商売に使ってんじゃないことが。
問い詰めたら、ある組関係に貸していたらしいのだが、
そこで個室型風俗店を営業していたらしい。
そこに手入れが入って、しかたなく出て行って、
持ち主も始末に困った、というのが実際のところだった。
それならそれで、もっと買い叩いてやるかと考えていたら案の定だ。
事故物件の匂いプンプン。
壁は張り替えられているし、ユニットバスにも手を入れた跡がある。

しかもおまけにいた。
それほど若いとも言えないアジア系の女がボーっと窓際に張り付いている。
「お前、よく俺に事故物件を紹介できたな」と友人を脅し付けたら、
あっさりと白状した。
手入れが入ったのも、店の女と客がトラブルになり、
女が殺された場所だという。
こんなところ誰が買うか、と吐き捨てて帰ってきたが、
女は今も迷ったまま部屋に閉じこもっているのだろうか。
怒りとか悲しみとか痛みではなく、
なにか半分困ったような表情が印象に残る霊だった。

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