教えに来てくれた

出会いは短大生時代、卒業を控えた冬でした。
とても優しく素敵な人で、私は関わるうちにどんどん惹かれていきました。
彼は出会った時にはすでに病気を患っていました。
私はそれでも一緒に居たいと、
お互いの実家ぐるみのお付き合いをしていました。
そんな彼との話です。

短大を卒業して遠距離になってしまっても、
彼は私の実家と彼の実家の間の丁度中間な距離にある病院に通っていて、
定期検診に来る度に、私の実家に泊まっていました。
彼の病気は亡くなる可能性もある状況で、
私の実家に来た時に鏡の前に立ち
「俺、天国に行ったらここに出るわ。
お前の母ちゃんにも世話になったから挨拶しなきゃな」と言いました。
そんな彼とのお付き合いでしたが、色々ありお別れしてしまいました。

別れてから二年くらい過ぎた頃でした。
私は実家を出て暮らし、ウサギを飼っていました。
そんなウサギ小屋を掃除する為に、仕事先から新聞を何日分か貰ってきました。
その新聞は、従業員が持ち寄った古新聞で、
新しい物から数ヶ月前の物まで様々です。
早速掃除しようと数枚広げると、お悔やみが目に留まりました。
時々気になりチェックはしていました。
そこに彼の名前がありました。
半年前の新聞でした。たまたまその新聞を持ってきただけでも、
彼が知らせてくれたのかなと思いましたが、これだけでは終わりませんでした。

その夜、布団に入り落ち着くと、彼との事を色々と思い出し一人泣きました。
締め切った部屋の中、エアコンも着いていない無風なのに、
頭上にある窓のカーテンが一度だけ大きく舞いました。

翌朝実家に行き、彼が亡くなった事、カーテンが舞った事を話すと、
母はこう言いました。
「だからかなぁ。夜中にトイレに立ったらドアが勝手に閉まったの。
気持ち悪かったんだけど、彼だったのかな」とのこと。
母の言うトイレのドア、生前に彼が挨拶すると話していた鏡、
これは洗濯機等と一緒に一畳程の狭いスペースにあるのです。
これはもう、彼が来たんだと思いました。

更に続きます。
新聞掲載より実際に亡くなったのは二日前ですが、
新聞の日付は彼との付き合った記念日で、
ウサギですが、生まれ変わりとは思いませんが、
産まれたのは彼の亡くなった時期と被ります。

最後に、自宅の窓から雪景色が綺麗で何気なく撮った動画があるのですが、
彼を思い出しながら撮ったのを覚えていて、
その撮影した日は彼の亡くなった日でした。
何があっても最後まで別れず側にいればよかったと思いました。

あの世は本当にあるのかもしれません。
不思議な体験でした。

朗読: 怪談朗読と午前二時

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