笑う門には魔来る

これは昔、仕事でよく一緒に組んだお寺の娘さんの話である。

お家の商売柄、霊に遭遇するのは全く珍しくもなんともない。
どちらかというと常時見えっぱなしに近い霊感の持ち主であり、
私が気付かないところでもよく危機一髪で助け出してくれたりした。
彼女曰く、一番怖い霊ってわかる?っていうから、そりゃ恨みの念が強い、
怒っている奴だろうと言ったら全然違うという。
何が一番怖いかと言ったら、笑っている霊ほど恐ろしいものはない、という。

その笑いにもいろいろあって、
彼女が非常に嫌っていたのは笑う子供の霊だった。
一見すると無邪気そうに見えるが、それが一番危ないという。
彼女曰く、3度殺されかけたという。
1度は寺の階段で、妙にニタニタ笑う小学校に上がるかどうかの女の子がいたという。
咄嗟にやばい、とは思ったが目が合ってしまった。
そのとたん、ものすごい勢いで階段から突き落とされたという。

この時は幸い、階段の下に父親である住職がいて助かったらしいが、
住職もただならぬ気配を感じて怪談に駆け付けたところ、
上から娘が降ってきたとびっくり仰天した。
とあとは水子供養の水子にとりつかれてしまい,大騒動になったのが二度。

そして一番恐ろしかったのは、ある老人の葬儀で出棺間際になって
異様な女がいるのに気付いたという。
葬式というのに、派手な訪問着をまとい、
寺の山門で実に愉快そうに高笑いをしていたという。
どうもこの爺さん、生前は女癖が悪く、いろいろな問題を起こしていたらしく、その中のだれかだろうということだったが、
ついに仕留めてやったという感情がむき出しの笑いで、
さすがの住職まで硬直してしまったというから恐ろしい。
大体笑う幽霊に共通しているのは、仕留めてやった、
一緒に道連れにしてやったという満足感が漂っているか、
思い切り不幸のどん底に落とす準備ができた、というものが多いそうだ。

人間の市場、、怖ろしい感情とは、笑いになって溢れてくるものよ、
と彼女は言った。
「ただ最近、怖いのは普通の道でもニタニタ笑いながら歩いている霊が増えてるのよね。それだけ人間の心がすさんでいるのかもね」
とさみしげにつぶやいた

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-
朗読: 怪談朗読と午前二時

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