生霊

これは僕が高校2年の秋口に体験した話です。

当時、僕は付き合って間もない別の高校の彼女がいました。
付き合う前はとても謙虚でおしとやかな子だと思っていたのですが、
いざ付き合ってみると俗に言う、重い。
どれほどかと言いますと、バイトに行き帰りが遅くなると何をしていたのか、
何故遅くなったのかをしつこく聞いて来るのです。
それだけなら寂しかったのかなと半ば無理やり自分を納得させていたのですが、
放課後、数人の友達とゲームをしようと
僕の家に皆であつまることになりました。
学校が終わり、各々の部活も終わり次第校舎前での集合になっていました。
そして私の家につく頃には7時頃になっており、
少しだけでもとゲームをしようと部屋に入った瞬間、
私のベッドで寝ている彼女がいました。
慌てて友達を部屋の前で待つように制し、
彼女を起こし何故いるのか理由を聞きました。
すると悪びれた様子もなく、ただ会いたかったから。
その一言を言うと満面の笑みで僕を見ていました。
その後彼女が友達を無理矢理帰し、二人っきりの状態に満足したのか、
30分ほど部屋に留まり、帰っていきました。

その数日後には、手作り弁当に爪が入っていたり、
またその数日後には、僕の上履きの匂いを嗅ぐ彼女を見たと言う友達まで出てきました。
自分で言うのも何ですが恋愛経験はそこまで少なくはなかった僕も
この子はヤバいとその時に感じ、次の日には別れを告げ、
何度も考え直しを提案されましたが断り続けました。
やっとの思いで別れられ一方的だったかなと少し反省しつつも、
呪縛から解かれた開放感でテンションが上がっていました。

その数日後、バイトで疲れてヘトヘトになりながら家に帰り、
ベッドにそのままダイブし寝てしまいました。
その日夢を見ました。今でもハッキリと覚えています。
夢の中で僕はソファーに座り漫画を読んでいました。
その時押し入れのドアが激しく叩かれ、ビックリしていながら押し入れを見つめていると、少し押し入れの隙間が開き、
その隙間から夥しい量の髪の毛が床、壁、天井、隙間なく這うように出てきて、
僕の足首や、首周りに絡まるように動いているのです。
そこで僕は飛びあがり夢から覚め、深く息を吸い気持ちを落ち着かせようと必死でした。
寝汗はびっしょり、体も震えていました。
気持ち悪い夢をみたなとその時は不気味ながらも所詮は夢と言い聞かせて、
その時は疲れていたせいもあってか、すんなりと寝付くことができました。

次の日、また次の日、そのまた次の日、何度も同じ夢を見るようになり、
僕は少しづつ神経をすり減らしていき、
学校もバイトもよく休むようになりました。

そんなある日、数日ぶりに学校に行くと友達の1人が
「 〇〇ちゃん(元カノの名前)って今何してるかしってるか?」
と聞いてきました。
わかるわけが無い、別れてから1度も連絡取ってないし、
通学の電車でも全く見なくなった。
何でそんなことを聞くのかと理由を聞いてみると
「 いやぁ〜俺も風の噂程度の情報なんだけどさ、
お前と別れた数日後に学校に来なくなったらしいんだよ」
そんなこと言われても正直今の俺にはそこを心配してあげられる余裕はなく
力のない返事をすると
「 しかもさお前学校休み始めたの同じぐらいの時期からだろ?
なんかあるんじゃねぇかなーって」
なんだよ冷やかしか?とも思いましたが、友達の顔はとても真剣な顔で、
ふざけて答えたらむしろこっちが殴られそうでした。
友達に夢の話を打ち明け、何かいい案がないかと相談したのですが
友達も難しそうな顔をして黙ってしまい、
特に何かいい策が出るわけでもなくその日は学校が終わり次第、直帰しました。

その日の夜、僕がトラウマになるほど恐ろしい夢を見てしまうのです。
その夢は外から始まりました。
いつもなら三人称視点での夢のはずが、
その日だけは一人称視点でスタートしました。
小雨の降る中、両サイドに街頭に照らされた家が点々と建っている、
砂利の道をゆっくりゆっくりと歩く。
そこの1番奥の場所には僕の家があるんです。
さらに怖いことに今見ている一人称視点の当人は確実に僕ではなく、
髪の長い女の人でした。
視界は長い髪の毛で少しだけ悪くなっており、顔だけ自分の意思で動き、
体は勝手に動いている、とても不思議な感覚でした。
服は花柄のワンピース、靴は少しそこの厚いスニーカー、
服も靴も酷く汚れており、酷くボロボロになっていました。
髪の毛はボサボサで痛みきっていて伸ばしっぱなしと言う状態でした。
そんな女がゆっくりと近づいて来ている。
そう思った瞬間に起きることに全神経を使っていました。
なかなか覚めない夢に焦りを感じつつも必死になっていると、
いつの間にか僕の家の前に着いてしまっていました。
頭の中が恐怖でいっぱいになる頃にはその女の手はドアノブを掴んでいました。
ゆっくりと玄関の中に入っていく女、それを為す術なく同じ視点で見ている僕。
来るなっ来るなっと心の中で叫んでいると、
玄関を入ってすぐに全身鏡があるのですが、そこの前で止まり、
少しづつ鏡に体を向け始めました。
見たくないのに、見えてしまう。
顔は動かせても目は閉じれない。
どうしようもない状況になんとか勇気をふりしぼり鏡を見ました。

そこには別れた元カノが映っていたのです。
一瞬恐怖が薄れたものの、服はボロボロ髪はボサボサ、
自分の全く知らない風貌の元カノにすぐに恐怖が混み上がってきてパニックになっていました。
そのまま元カノは階段を少しづつ登っていき、
とうとう部屋の前に来てしまいました。
元カノは部屋のドアノブに手をかけ開けた瞬間に
僕はこれでもかと言う大声を出して目覚めました。

目が覚めると同時にドアに目をやり睨みつけるように見ていました。
しばらく見ていてもなんの反応もないドアに なんだやっぱりは夢は夢か、
と少し安心しつつドアをゆっくりあけました。
そこには何もおらず安堵感からか大きなため息をつくや否や、
以上に喉が乾いていることに気づき、
飲み物を取ろうと階段を下りキッチンへ飲み物をとりに行きました。
その際必ず玄関を通らなければ行けないのですが、何故か玄関は開いており全神経の前には何かヌルッとしたものがへばりついていました。
たまたまだろうと納得させるにはあまりにも不自然すぎるタイミングだったのでそこからは部屋に籠り朝まで震えていました。

登校時間になるとすぐに家を飛び出し 友達のいる学校へ急いで向かいました。
朝一番で出たためか、まだ友達は来ておらず しばらく待っていると、
いつも通り眠そうな顔をした友達が来て
「 おお〜おはよー」 なんて気だるそうな声を出しながらすぐにあくびをしていました。
そんな日常的なことが今の僕には嬉しく思え、泣き出してしまいました。
友達に夢の内容を泣きながら話し、
要領を得ない話にも優しく頷きながら聞いてくれました。

そこから友達は元カノに会いに行こうと言い出し、
もちろん拒否しましたが、1度言い出したら聞かない性格。
渋々元カノの家に連れていかれました。

↓以下元カノの家でのこと
インターホンを押すと甲高い声で 「はーいっ今出ま〜す 」と
それは元カノのお母さんの声がする。
何度かあっているので気まずさを混んじながらも
「あの、〇〇ちゃんいますか? 」 と聞いてみる。
「 居るには居るのだけど、、、本当にあう?」
ん??本当に会うとは? 少し引っかかりながらも
「 大事な話があるので」 と少し強めに返す。
「分かったわ、上がって 」 元カノの部屋の前に連れていかれる。
「じゃー飲み物でも入れてくるから 」
と別の部屋に行ってしまう元カノのお母さん。
コンコンっとドアを叩く、すると消え入りそうな声で
「 なに、、、、、お母さん?」 元気のない声であった。
「いや、俺だよ、〇〇だよ(俺の名前)」
こちらの声は震えていた。
ガチャッ なんの返事もなく開くドアに少し戸惑いながら 部屋を覗く。
隅の方に立っていた元カノの姿を見た瞬間腰を抜かしそうになった。
あの夢と同じ格好なのだ。
靴は履いていないものの、汚れた花柄のワンピースに
ボサボサの痛みきっている髪の毛。 正直めちゃくちゃ怖かった。
「 なんの用?」
急に話しかけられたのでビクッとなりながらも
一方的に振ってしまったことを謝りに来たことを告げると、悲しそうに
「 そう、それはもぉ気にしなくていいよ、
もぉ大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫」
変な返しをされ、長居は出来ないと思った僕はそこから2言、3言話しすぐに帰ろうと立ち上がり、後ろを向いた瞬間、背筋が凍りつきました。

B2用紙ほどの大きさの紙に
いっぱいに文字が書かれた物が壁に貼られていました。
入った時は背になっていたので気づかずそのまま入って来てしまったのです。
その文字は全て赤黒い何かで書かれており、全ては見れませんでしたが、
死、呪い、鏡、そして僕の名前が書かれていました。
限界を感じ、全力ダッシュで元カノの家を飛び出し
外で待ってくれていた友達にまた泣きついてしまいました。

後日、お祓いをしてもらいその際になんだったのか住職さんに聞いてみると、
生霊 と言うもので人の念があまりにも強すぎると生きている人間でも霊体となって想い人の所へ来てしまうそうです。
ところが好意での生霊ならまだマシなのですが、
悪意、つまり恨みや嫉妬の念が生み出す生霊はとても怖いそうです。

分かりにくい上に長くてすいません。
以上が僕の体験した話です。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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