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ドライブレコーダー

先日経験した話。

俺はトラックドライバーの仕事をしています。
先月、ようやく我が社も全車両にドライブレコーダーの搭載が完了し、
有事の際にはこれで安心と皆がドライブレコーダーの仕事っぷりに期待しました。
そんな矢先、熟練ドライバーのA先輩が事故を起こしトラックは全損、
先輩も潰れたキャビンの中で足を挟まれ入院という大きな事故でした。
不幸中の幸いと言いますか、事故は単独でA先輩の他に怪我人はおらず
人気の無い田舎道にポツンと佇む廃墟に正面から突っ込んだ、との事。
事故の詳細を確認する為に、回収したドライブレコーダーを会社で再生する。
内容が気になるのか、野次馬ドライバー達が荷物の積み下ろしを中断して事務所に集まります。
俺もその中の1人でした。

映像が再生され、画面には穏やかな田舎の景色が映し出されると同時に、
A先輩の大きな歌声が聞こえてきました。
唐突に残念な歌唱力を披露され、事務所内は一同大爆笑。
その後も歌声と同様に軽快な運転が映像には映っていました。
仮にも熟練のドライバー、安全かつ的確な運転で事故を起こす気配など微塵も感じさせません。

ところが、後輩がある事に気づきました。
「なんか、先輩の歌声以外に誰か何か言ってませんか?」
そこから異変が始まります。
A先輩の歌声の奥で確かに低く、小さな、でも確実に男の人の声で
「、、、右」と。
私たちの配達はルート配送、決められた道を毎日通って同じ納品先に向かいます。
なのにA先輩は正規のルートを外れて右折、そしてまた男の声で「、、左」
それに従う様にA先輩は左折 正規のルートから逸れる また逸れる 歌い続けるA先輩はその声に気付いていない様子だが、
確実にその何者かの声に導かれる様に
「、、、、左」 左折する。
そして緩やかなカーブの先に事故現場の廃墟が見えてきました。
ガタっ!という音の後にA先輩の声で
「おっ!?あれ!!ヤッベ!!!」
その後大きな急ブレーキの音と共に衝突、事務所内の全員が凍りつきました。
後にA先輩に何があったのか聞くと、
ハンドルの前に固定していたスマホスタンドが、こうべを垂れてきて落下。
綺麗にメーターパネルとハンドルの間に挟まりハンドルがロック。
操作不能でブレーキを踏んだが間に合わなかったらしい。
なぜ正規のルートから外れたのかという問いに対しては
「なんとなくこっちの方が早そうだったから」だそうだ。

それから会社は全部のトラックのタイヤに盛り塩してた。
A先輩は交通安全祈願のお守りを3個同じやつ買ってた。
持ってる量で効果が上がるなら、あと10個くらい俺からプレゼントしたいけどそう言うのじゃない気がする。
その廃墟で過去に何があったのか俺は知らないし、
あの声の事も怖いしこれ以上関わりたくなかったから、何だったのか未だに分からんけど。

A先輩きっと霊的な何かに導かれたんだと思う。
だって総務の人が書類作るために事故現場行ったらしいけど、
花束置かれてたってさ

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-

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