トイレットペーパーの蓋

中学生の時に体験した話。

学校で休み時間に便意を催してトイレに入ろうと思ったんですが、
男子中学生って他人のトイレ事情、
特に大きい方をイジってくるじゃないですか。
見つかってネタにされるのも恥ずかしいし、
俺はそう言うの上手く躱せない人だったので、
個室を使う時は教室から少し離れた体育館前のトイレを使っていました。
トイレは入り口から見て縦に長方形、右に小便器が並び左に個室が4つ、
その1番手前は掃除用具入れになっていて3つが和式トイレという作りです。
俺は1番近い2つ目の個室に入りました。

俺以外に人は居なくて快適に用を足しトイレットペーパーに手を伸ばした時でした。
正式な名称が分からないのですが、トイレットペーパーの上の蓋と言いますか、
ペーパーを切る時に使うガラガラ言うアレです。
そのトイレットペーパーの蓋が鏡面のステンレスだったんですが、
個室の天井を映して俺の後ろ側、
つまり掃除用具入れの壁上から灰色の老婆が顔半分をだして覗いていました。

俺は一瞬固まり、物凄い戦慄が走ると共に
勢いよく振り返り見上げると、そこには古いモップが頭を出していました。
俺が見たのは確かに老婆でした。
しかしそこにあるのはただのモップ。
俺は舌打ちをして立ち上がりそのモップを軽く押すと、
壁の向こう側から「ガタン!」と落下する音が聞こえました。
トイレを済ませた後、心拍数は上がったままですが、教室に向かいながら
「良い笑い話になるな」と思っていた矢先、
ある事に気付き猛ダッシュで先程のトイレに戻り、
掃除用具入れのドアを開けました。

無いんです、モップ。
そこのトイレは俺のクラスで掃除をするので気付きましたが
掃除用具入れの中にあるのは水道、ホース、洗剤、ブラシ、
そして先端にゴムのハケが着いたT字ホウキのみ。
あの時触った古い毛の感覚は確かにモップだった。
壁の向こうに落下する音も聞いた。
何より鏡面の蓋に映っていたのは、確かに灰色の老婆だった。

色々な考えが頭を駆け巡り、ようやく思考が恐怖にたどり着いたとき
俺はダッシュで教室に戻りました。

これが俺が中学生時代に体験した怖い話。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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