これは私が中学生だった頃の話です。
私は中学で野球部に入っていました。
普段はグラウンドで練習をしていましたが、雨や雪の日となるとグラウンドは使うことが出来ず、室内練習をしていました。
室内練習は主に校舎の廊下を一階から三階まで決められた時間の間周回する、というものでした。
そして、私がこの体験をした日も同様の練習をしていました。
私は、部内でも運動能力が下の方で、他の部員とかなり差をつけられた状態で走っていました。
その日は特に、皆に追い付かないとと思うたびにますます差をつけられていきました。
ゼェゼェと息を切らしながら一階から三階、三階から一階と走り続けている間に前に部員の姿が見えなくなるほど離されてしまい、一人三階の廊下をキリキリと痛む脇腹を押さえながら走っていました。
その時、後ろからバタバタと足音が聞こえ「え!? もう後ろまで来てるの」と思い後ろを振り向きました。
すると、ブンブンと手足を振りながら、人型の何かが後ろ向きにこちらへ走ってきていました。
私は前に向き直り、必死に先生のいる下駄箱に向かって走りました。
その間も何度か後ろを確認しましたが、やはりその人型の何かは私を追ってきています。異様な走り方で。
やっとの思いで、下駄箱まで辿り着き先生を探しました。
しかし、そこには先生の姿どころか、私たち部員が置いていたエナメルのカバンさえ見当たらないのです。
途方にくれていると、バタバタと足音を立てながら階段から降りてくる人影が見え始めました。
もうダメだ、そう思い私は目をギュッとつぶりその場に座り込みました。
しかし、1分経っても何も起きません。
そして、足音も聞こえてこないことに気が付きました。
助かった、そう思い私は目を開けました。
目の前で顔が私を覗き込んでいました。
人間の顔を180度回転させた様な上下反対の顔が。
それ以降私の記憶はありません。
先生や部員によると、私は三階の廊下に倒れ込んでいたそうです。
アレは一体何だったんでしょうか。いや、もう考えたくもありません。