俺は、幽霊に嫌われているらしい。
自覚はないのだが、霊感のある友人曰く、
俺が近くにいると霊が嫌な顔をして去っていく。とのこと。
俺を恐れているとなれば自慢できそうなのだが、別にそう言う訳でもないらしい。ただただ嫌われているだけなのだと友人は言う。
あれは確か高校3年の夏。
家族で沖縄へ旅行に行った時のこと。
俺は弟とビーチボールをしていた時、
風に飛ばされてボールが海中へ落ちてしまった。
海岸からそれほど距離もなかったので、俺は泳いで拾いに行くことにした。
そして案の定、ボールを夢中で追いかけて、気づけば俺は沖に出かかっていた。 やっと捕まえたボールにしがみついて、遠のく砂浜を眺めながら、(あー 死ぬのかなー)なんて考えてた。
するといきなり、足首を冷たい何かが足を掴んだ。
「ほぇ?」 なんて間抜けな声を出していると、水面下の何かが、俺の足を掴んだまま物凄い速さで動き始めた。 引き摺られてた俺は呼吸もできず、しがみつくものを求めて手足をばたつかせていた。
数秒後、いきなり浮遊感に包まれたと思えば、俺は砂浜へ勢いよく放り出され、身体中砂まみれになってしまった。
肺に入ったであろう海水を吐き出しながら、辛うじてまぶたを開けると、波打ち際に、やつがいた。
頭の上半分と、右手を水面に出し、嫌そうに「シッシッ」という仕草をしている。
まるで俺が仲間になるのを嫌がっているみたいに。
幽霊が仲間を欲しがって他人を海へ引き摺り込むという話はよく聞くが、まさか逆に引きずり出されるとは思わなかった。
これが、俺が初めて幽霊を見て、幽霊に触れて、幽霊に命を救われた話。