悪魔に取り憑かれた人の話

これは、私の友達に起こった話です。

Aさんは小さい時、ある外国の学校の寮に暮らしていました。
その学校ではAさんが1番年下だったため、Aさんは管理人さんにとても気に入られ、管理人さんはAさんをどこに行く時も連れていきました。

だから、生徒たちは入ってはいけないと言われている地下室にも連れていってもらいました。

ある日、地下室へ行った後に階段を上ろうとすると、Aさんは何かに足を引っ張られているような感覚がしました。
その何かはAさんの足をグイグイ引っ張り、上へ上らせまいとしてきます。

それに気づいた管理人さんは、慌ててAさんの手を力強く引っ張りました。
そして急いで階段を駆け上がり地下室から出たあと、管理人さんはとても怖い顔で聞きました。

「お前、前に地下室行ったあとお風呂はいったか?」
Aさんは入っていませんでした。管理人さんは続けました。
「あっちに引き釣りこまれるとこだったぞ。いいか、これからは絶対、地下室に行ったあとは風呂に入れ。じゃないと呪われるんだ」

それから月日が流れたあとの話です。
Aさんの姉がふと物音で目を覚ますと、Aさんがまるで人ではないような目をして立っており、隣で寝ている人の顔を片手で信じられない強さでぐしゃっと潰すと、寮に置いてあるみんなの荷物を狂ったように外へ投げ始めました。
姉は慌ててAさんを止めようとしましたが、Aさんの力が強すぎて全く立ち向かえません。

すると、隣の部屋から強そうな男の人が2人やって来てAさんを止めようとしました。しかし、Aさんは人間とは思えないほど怪力になっていて、男性2人が取り押さえるのもやっとでした。

また、Aさんは何者かと会話していました。
相手は人間ではなく、話している時は死んだように無表情で口だけを魚のように動かし、声は全く発しませんでした。

それは別の日だったのですが、その日の夜に姉がそうやって話しているのを見つけたそうです。
Aさんは、姉に向かって
「私には、あの人たちが見える。お姉ちゃんには見える?」
もちろん、姉には何も見えませんでした。

後から分かったことですが、彼らはAさんにしか見えない存在なのだそうです。
Aさんは続けました。
「あの人たちは、お姉ちゃんを友達だと思ってる。私の真似をしてあの人たちと話して」

姉は、声を出して喋ろうとしました。
するとAさんは、急に怖い顔をして言いました。
「こんなの人間と一緒じゃん。なんで人間みたいな喋り方するの?」

姉には、その一言が恐ろしく感じられましたが、姉は妹の顔を真似して、頑張って話そうとしました。
しかし、どうすれば良いのか全くわかりません。

Aさんに言われるとおり必死で頑張っても、できません。
Aさんは「心の声!心から声を出すんだよ!」
とかよくわからないことを言うので、さらに意味が分からなくなって、仕方ないのでとりあえずAさんの顔を真似して口をパクパクしてみました。

すると、「あの人たち」にはそれが言葉として通じたらしく、Aさんは「あの人たちがありがとうって言ってもう行っちゃったよ」と伝えてくれました。

姉は、やっぱりAさんの様子が変なので、一度Aさんと一緒に日本へ帰ることにしました。しかし、帰国後もAさんの様子は変わりません。

まるでなにかに取り憑かれているようで、夜になるといきなり暴れだしたりするようになりました。
そこで、Aさんはお祓いをしてもらいに行きました。

やはり、悪魔に取り憑かれていたそうです。
また、このように悪魔に取り憑かれる人は少なくないそうで、誰でも起こりうるそうです。

それから、Aさんが夜に暴れることはなくなりました。
しかし、しばらくの長い間は、まだ「あの人たち」が見えて、「話し」ていたそうです。でも、夜に暴れていたことは全く覚えてなくて、全て姉の記憶です。

今はもうAさんは「あの人たち」とは話せないらしく、時々見えるくらいだそうです。最近は電柱の上にいたそうですよ。

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朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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