やってはいけない事

この世にはやってはいけない事がある。
ちまたで流行っているこっくりさんとか、 ひとりかくれんぼとか、 あんなのは都市伝説にすぎない。

俺はあれをやってしまったが故に、 今も悩まされている。
この話しが世に広まる頃には、 俺はこの世にいないかもしれない。

当時、俺は友人の貴史とよく遊んでいた。
しかし、俺は貴史の事が嫌いだった。
貴史には彼女がいて、 俺は貴史の彼女の事が好きだったからだ。
何でも俺の欲しいものをいとも簡単に 手に入れてしまう貴史が嫌いだった。
いつしか、どうしてでも貴史の彼女と 付き合いたいと思うようになっていた。

ある時の事、 俺は古書を扱う本屋で怪しい本を見つけた。
おまじないとか、 そう言ったたぐいのものは好きではないが、 それは儀式などが書いてある本だった。
黒魔術書のような本で黒表紙に茶色く変色したどうにもカビくさい本だ。

店主は「こんな本知らないなぁ、いつからあったんだろう」
と言いながらも譲ってくれたのだ。

早々に貴史に連絡した。
そして、その本に書いてある儀式をやってみることにした。
その儀式のやり方のページに1枚の写真が挟まっていた。

その写真は、 白黒で1人の女性がじっーとこちらを見ている写真だった。
見たとたん気持ち悪くなるくらい、 不気味な雰囲気の写真だった。
おかっぱの女性が首を斜めに傾けて、 笑っているような泣いているような よくわからない表情をしてこちらを見ている。
その視線はどの角度からも目線があわず、 死んだ魚のような目をしていた。
俺はその写真を見たくなかったので、 すぐ写真を横に置いてその儀式をやってみることにした。

儀式は簡単。
ふたり机の前後に向かい合い、 ろうそくに火をつけ、 真ん中に鏡を二枚合わせて置き、 合わさった真ん中に卵を置いて その卵に人間の血を1滴かける。
そして、 かかれたお経を逆さまから、 よんでいくといった内容だった。

俺はそう言ったものは信じていないし、 オカルト好きな貴史もふざけ半分で この儀式をやることにした。
なにか霊障があるかなと思い録画をした。

そして、 お経の逆さよみをした途端。
貴史の様子がおかしい。
貴史は一点をじっーとみつめていた。
俺は「どうせふざけてやっているのだろう」
と思いながらお経をよみすすめた。

お経をよみ終えた時に、 ポッっとろうそくの火が消えた。
何も起きないと思いながら貴史をふと見ると、 貴史は人が変わったように、 一点をじっーとみつめながら、 首を斜めに傾けて早口で何かを言っている。

貴史に「終わったからもう良いよ」 と言ったが、
貴史は「○§*#>≧-≫ヶゎゑヱю」
意味のわからない事をずっと言っている。

その声は飛んだり早くなったりするような言葉だった。
10分後くらいたった頃、 貴史はふと我にかえり何事も無いようにしたので、俺は貴史のおふざけだと思っていた。

数日がたち、 俺は朝のニュースで目が覚めたとともに、 さぁーと血の気がひいた。 貴史がニュースにうつっており、 貴史が彼女を惨殺したと言うことだった。

ニュースにうつった貴史は、 首を斜めに傾けて早口であの言葉を言っていた。

その時に俺は取り返しのつかないことをしてしまったと後悔し、 あの写真の女が乗り移ったと思った。
儀式の最中に俺は貴史を呪っていたからだ。
その後貴史は獄中で自殺をしたらしい。

数年後、 録画したビデオテープを部屋に隠していたのだが、弟が見つけ出して再生したり逆再生をして遊んでいた。
俺は青ざめた。

そう貴史が言っていたあの言葉。
逆再生をすると、 「ツギハオマエダ」「オマエガシネ」 と連呼しながら笑っている。 貴史の声ではなくかすれた女の声。

今でも町のどこかで出会ってしまう。
あの見たくない不気味な笑顔に、 首を斜めに傾けて早口で言うあの声に。

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