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釣り人

普通の日常の中で私が体験した怖いと感じた体験談です。

社会人なり実家を出て祖父母の近くで独り暮らしを始めた頃、祖父母の家の近く(といっても田畑も自然も少ない住宅街)独り暮らしを始めた家の近所に高校からの友人の「なおちゃん」も独り暮らしをしていました。

なおちゃんの家は勤めていた会社が借りてくれている綺麗なワンルームマンションだったのですが、なぜか毎晩、古い団地の私の家に泊まりに来ていました。

その頃、私の家のお風呂場には、まだ浴槽がなく、私は近所の祖父母の家に毎日お風呂を借りに行っていたのですが、その日は雨で時間も遅くなったので祖父母の家ではなく、なおちゃんの家にお風呂を借りに行くことにしました。

季節は夏でお風呂上がり、なおちゃんがクーラーをつけてくれていたので少し涼んで帰ろうとすると、やはり なおちゃんは私の家に泊まると言い、明日の着替えを持って一緒にマンションを出ました。

「いっそのこと一緒に住む?でも、会社が家賃を半分出してくれてるんでしょ?」
そんな話をしながら行きとは違う道を通って帰ってみようと、2人で雨の中、よく知らない暗い夜道を歩いて私の家に帰っていました。

空が光り遠くで雷鳴も聞こえていましたが、
突然、正面の空に紫の稲妻が走りバリバリバリという音と共に辺りを昼間のように照し、私たちは悲鳴をあげ「キャ~!あはは!キレイ!」と怖いながらも稲妻の美しさに感動し騒ぎながら歩いていると100メートル位の長さはある真っ直ぐな1本道に出ました。

私は一瞬その距離に躊躇したものの、なおちゃんは気にしていない様子だったので その道に向かって歩みを進めました。

車も通っていない暗い道の真ん中に稲妻に照らされて人が立っているのが見えました。 またも凄い稲光でキャッキャ言ってる私たちとは全く違う雰囲気を醸し出している人影はこの雨の中で傘をさしていません。

私は、うるさいって怒られるかも知れないと思い、 雨足も強まり傘に叩きつける雨の音で話し声も聞こえづらくなったので無言で歩きました。
なおちゃんは、ご機嫌で雷に喜んでいるのか声を出して笑っています。

その1本道はなんだか異様でした。

道幅は車が2台は通れる幅はあり、右側には民家らしき家はなくフェンスがあり、左側は白っぽい壁、高さ2メートルは越えていて、その上は有刺鉄線が付いています。

そんな道の真ん中に私達に斜め背中を向け立っているのは男性でした。

徐々に近づき、更に違和感を感じずにはいられませんでした。
男性は、どしゃ降りで雷が鳴っているにも関わらず、傘をさしていないどころか、長い釣竿を天に突き立てるように持って立っているのです。

足元には無造作に大きな青と白のクーラーボックスが2つ置いてあり、着ている服は長袖の白いジャンパーで背中に何か英語で円を書くように描かれていて、その中に躍動感のある魚のイラスト、勢いよく釣り上げられたような感じに描かれており、頭にはキャップをかぶりボリュームのあるモジャモジャパーマの髪がはみ出しています。

顔は微妙に見えない角度で少しうつむき加減で立っており、私は本能的に怖いという感覚が襲ってきて、男性の横を通りすぎる時、緊張して無意識に息を止めていましたが、男性が向いて立っているの方に目をやりました。

ずっと繋がっていた白っぽい壁がそこだけ門柱があり門扉は無いのか遮るものはありません。
門柱の中は木が生い茂り敷石のようなものがカーブを描くように敷いてありますが、その先に家屋のようなもの見えません。

男性から7~8メートルぐらい離れた時です。
突然、水溜まりを踏みながら物凄い勢いで走ってくるような恐ろしい気配が後ろからやって来たのです。

その気配は私の傘の中に入り、左の耳の近くまで顔を近付けて来ました、思わず頭を左側に傾けるように体が硬直、大きく1歩右側によけてすくんでしまいました。 私の右側を歩いていた なおちゃんの傘の中に私の傘が入り込みなおちゃんの頬に私の傘のヘリが当たりました。

あの人痴漢だったの?!と思い硬直したままゆっくり左後ろを向いたのですがそこには誰もいませんでした。
すぐ後ろにも、さっきまでそこにいた男性もクーラーボックスも何も誰もいないのです。 でも、ここまで真っ直ぐの1本道で曲がり角も無く、そこ数十秒の出来事です。

私は なおちゃんに謝り、なおちゃんは
「どうしたの転びそうになった?大丈夫?」
と言いながら、 後ろを向いたまま
「あの人は?何処に行った?」
と、言った私の声が聞こえなかったのか「ん?」と言って後ろを見たあと前を向き歩き始めたので、私も前を向き驚きました。

正面の風景が変わっていました。
真っ直ぐ続いていた道は終わって小さな四つ角があり普通に家があるのです。
更に後ろを振り向くとそこは特に先程と変わりなくフェンスと白っぽい壁の道ですが100メートルも長くはないのです。

私は何が何だか分からず、普通に前を向いて歩いている なおちゃんの横にならんで歩いて家に帰りました。
さっきの出来事は何だったのか、家に帰りなんだか少し怖くて言葉にすることが出来ず、その夜は特にその話をすることも無く眠ることにしました。

その夜中、隣の布団で寝ている なおちゃんがうなされている声で目が覚めました。 私は人がうなされているのを初めて見て、起こしていいのか起こさない方が良いのか悩んでいました。

寝ている人の寝言に答えてはいけないと言う言葉を聞いたことがあったので、起こしてもいけないかのかなぁ…と、苦しそうにうなされている なおちゃんの顔を上から覗き込み、心で「なおちゃん!なおちゃん起きて!」と念じていると、突然 なおちゃんが目を見開き、私の顔を見て「怖かったよー」と言って大声で泣きはじめました。

泣いているなおちゃんを落ち着かせて、話を聞くと、夢で自分の家であるマンションに誰かいて、ずっと見られているというのです。
何処に行っても追いかけられている感じがして視線を感じる、その見えない恐怖からずっと逃げていたと、姿は見えないがとても怖い感覚だけは襲ってくると、外を走り回っていると私を見つけて「ゆうな!ゆうな!助けて!ゆうな!」と私の名前を呼びながら腕を握った瞬間、目が覚めて私が顔を覗き込んでいてホッとして泣いたと言うことでした。

その後、半月程たった昼間に釣竿を持った男性のいた道へ行ってみました。
左のフェンスは小学校でした。

右側には、あの日見た白っぽい壁があったのですが、白ではなく明るめの灰色で門柱は無く四つ角まで壁しかありませんでした。
壁の向こうには何があるのか、祖母に聞いたところ、「壁の中は広い土地があり1軒Aさんという人の家がある。」と言うことでした。

それ以上のことはよくわかりませんでしたが、先日思い出してGoogleの空撮画像を見て見ると、今も高い壁に囲まれた広い敷地に建物のような物が二つ程建っていましたが、草や木が生い茂っているように見えました。
壁の回りは閑静な住宅街でそこだけが隔離されたように見えます。

あの日の出来事は不思議でもあり怖い体験でした。
これを書きながら思い出すその男性の髪は、今思えば雨に濡れていなかったと思います。 パーマのかかった髪は濡れるとチュルチュルなるはずで、記憶にある髪はフワフワのモジャモジャでした。

その出来事の後、すぐに なおちゃんは私の家に引っ越してきて、浴槽を買い、1年ほど一緒に住んでいました。 特にその出来事にまつわる怖いこともないのですが、稲妻や釣り人を見るといまだに思い出してしまいます。

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