ちょうど十年前の夏。
私が勤めている不動産会社にある民家の遺品整理をして欲しい。
と言う仕事の依頼が来ました。
遺品整理と言ってもその民家の中にある物を全て捨てると言う業務内容でした。
私の勤務先は土木建築もやっているので、
私ともう一人の作業員との二人でダンプに乗ってその民家に向かいました。
その民家と言うのは当時から遡って4年前に、
そこで一人暮らしをしていた家主のお婆さんが孤独死をしているのを発見され、
家の中の物がそのまま放置されているとても古い建物でした。
家の中に入るととてもカビ臭く、
そこら辺にネズミの糞が散らばっていて気持ち悪かった事を覚えています。
私達は手分けして中の荷物をダンプに積み、
ゴミ集積所に捨てに行くと言う作業を繰り返しました。
作業三日目の昼過ぎに、もう一人の作業員がゴミを捨てに行き、
私は現場に残ってゴミを玄関に運ぶと言う段取りで午後の作業を再会しました。
私が1人になった途端、風通しが良かった廊下の空気がスッと止み、
驚くほど静かになりました。
私は何故が視線を感じ、その時に居間の方から何か小さくて堅いビー玉の様な物が落ちる音が聞こえました。
私は居間に向かい確認をしたら既に片付けが終わっており、
「居間の押し入れにまだゴミがあるのかな?」と思い
押し入れを明けたら隅っこに後ろ向きに置かれているガラスケースがありました。
そのガラスケースを確認したら中には着物を着た日本人形が入っていました。
そしてその人形の顔は塗装が溶けていて不気味に歪んでいました。
私はとてもびっくりして背筋が凍り、恐怖を感じました。
その人形は気持ち悪いながらもその日の内に集積所に捨てました。
その現場での約1週間の作業を終え、恐怖感も大分忘れて来た頃。
夜寝て朝方に目が覚め、そのまま金縛りにあい体が全く動かず、
数分経ってようやく体が動き部屋の電気を着けようとしたら
また目が覚めた所に戻って金縛りになり、
それを繰り返すと言う夢を見るようになりました。
金縛りになっている時はいつもお腹の上に何かが座っていると言う違和感を感じます。
そう言う夢を見る様になってからのある日、
私はまた夢の中で金縛りになりました。
しかし今回は何かが私の顔に迫ってきました。
一瞬だったと思いますが、着物の裾の様な物が見えました。
あの日本人形が何だったのか解らず10年が経ち、
金縛りの夢を見ることは無くなりましたが、
私は部屋を暗くして寝る事が出来なくなりいつもダウンライトを着けて寝ています。