あれは誰へのメッセージだったのだろうか?
友人Aが怪我で入院し、友人Bとお見舞いで病院に行った。
健康診断も会社に来る健診バスで済ませる私には数年ぶりの総合病院だ。
診察待ちや会計待ちの人でざわめく1階をスルーし、エレベーターホールへ向かう。
合計3台のエレベーターのうち1台が1階にあった。
上のボタンを押すとすぐに扉が開く。
「あいつ何階?」
「4階の415だってさ」
4階のボタンを押す。
扉が閉まるとエレベーターは静かに上昇を始めた。
「大部屋?」
「4人部屋って言ってた」
他愛ない会話をしながら4階に着くのを待つ。
ポン
エレベーターが止まり扉が開いた。
私はエレベーターを降りようと足を踏み出す。
「おい、ここ3階」
友人Bが私を止める。
見上げると確かに3階のランプが点灯していた。
「止まったから4階かと思ったよ」
私は言って苦笑いする。
「あるある。たまに俺もやる」
「誰もいないな」
「誰かが押していったんだろ」
友人Bが閉まるボタンを押す。
エレベーターは再び動き出し4階に到着した。
「わりぃな」
友人Aが照れ臭そうに言った。 元気そうだった。
骨折した足は痛むらしいが、それ以外はぴんぴんしている。
退屈しているという友人Aとの話は長くなった。
「ちょっと売店に行ってくる。何か欲しい物あるか?」
「じゃあ、何でもいいから雑誌買ってきて」
「俺はコーヒー頼むわ」
私は1階の売店へ向かった。
下ボタンを押してエレベーターを呼ぶ。
乗り込んだエレベーターは何故かまた3階で止まった。
誰も乗ってこない。
売店で買い物を済ませて4階へ。 やはりエレベーターは3階で一度止まる。 「……何だこれ?」
私が思わずつぶやいた時だった。
「降りないの?」
誰もいないはずの開いたエレベーターの扉の先から女の子の声がした。
私は急に怖くなり閉まるボタンを連打する。
「待ってるのに」
ハッキリと聞こえた。
そして扉が閉まる瞬間、その隙間に俯いた少女の姿が見えた。
私の心臓はバクバクと鳴り、体は恐怖ですくんでいた。
エレベーターは何事もなかったように4階に着いた。
帰りは不思議がる友人Bをよそに私は階段で1階まで降りた。
数日後、あれは一体何だったのかと落ち着いて考えられるようになり、
私は1つ思い出した事があった。
小学生の頃、同じクラスの女の子でずっと入院していた子がいた。
クラスの代表が定期的に先生とお見舞いに行っていた。
それがあの病院の3階だったような気がするのだ。
彼女は小学校を卒業して少し経った頃に亡くなった。
私は卒業アルバムをめくっていた。
彼女の写真を探す。エレベーターの隙間から見えた子に似ているような気もするが、確信は得られなかった。
パラパラとアルバムをめくると寄せ書きのページが目に入る。
隅に小さく書かれた彼女のメッセージと名前を見つけて私は後悔した。
【次はちゃんと来てね】