虫の知らせ

これは、私がまだ派遣として働いていた時の話。

数ヶ月前、私は今の勤務先の工場から自宅まで片道11kmはある場所を自転車で毎日移動していた。
当然道のりも長いので、移動中イヤホンをしながらいつものように音楽を聞いて走っていました。

踏み切りを抜けて、途中大通りのある交差点に差し掛かった。
信号は赤で、私は信号が青になるまで待っていた時ふと何気に
「○○家の葬式」と書かれた看板をみた。
丁度交差点の近くには冠婚葬祭のホールがあり、
「ああ、また誰か亡くなったんだ…」と思いながら音楽を聞いていた時にそれは起こってしまった。

次の曲が流れるまで何秒か空いた瞬間、
突如イヤホンから「ジリリリ…」と、
田舎によくあるサザエさんに出てくるあの黒電話の音が聞こえてきた。
「えっ…?」
私は耳を疑い、すぐにイヤホンを外してスマホを確認した。
勿論、着信音に黒電話なんて設定した覚えもない…。
「じゃあ誰かのスマホの着信音かな…?」
そう思って信号待ちをしていたおばちゃんを見たけど、
そのおばちゃんはガラケーで電話している素振りもなく不思議そうに私を見ていただけだった。
「あの黒電話の音は一体何だったのかな…?」
そんな事を考えながら、私は工場に着いた後仕事に集中した。

やがて仕事が終わって、いつものように私は妹の部屋で談笑を始めた。
「今日な、交差点で信号待ってたらいきなりイヤホンから黒電話の音が聞こえてさー」
と、その日あった事を妹に言いふらしていると家の電話が鳴って母が慌てこう伝えた。
「今日、親戚のおばちゃんが亡くなったって」
…私は、今日あった事を思い出した。
まさかあの黒電話の音は、親戚のおばちゃんが亡くなった知らせ…?
そういえば、大人になってからしばらく逢ってなかったなぁ…。
親戚のおばちゃんが入院していたことは父からだいぶ前から聞いてはいたが…
こんなに早く亡くなってしまうなんて…と私は思った。

信じてもらえないかも知れないけど、これも実体験です。

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