透明な赤い蛆虫

 とても不思議というわけではなく、お話としても特に何かが起きるというわけではないのですが、私自身が体験し、原因もなにもわからないお話です。

 私は蛆虫や芋虫のような、手足がなくうにょうにょと動く小さい虫が子供の頃からとても苦手です。
 普通に生活していればそんな虫に遭遇することなど特にないので、何も気にすることもないのですが、小さい頃は、「もし蛆虫が今私のすぐそばにいたらどうしよう」と勝手に想像して怖がっていました。それが原因なのかもしれません。

 小学生低学年の頃です。
 夜、寝ている私の毛布の端を、赤い透明な蛆虫が這っていたのです。
 普通の蛆虫は乳白色だと思うのですが、私の目の前を、体を蠕動させ毛布の端を這っていたのは、体長5ミリ程度で透明で薄赤い体をしていたのです。
驚いた私は慌てて両親の部屋に行き、「あたしの毛布に蛆虫がいる!」と両親に話しました。
 最初は父も母も信じてくれず、お決まりですが寝ぼけたのだろうと言われましたが、それでも透明の赤い蛆虫がいると言い張る私に、父が仕方がなく私の部屋に来てくれ、毛布を取り、窓の外にだしてバサバサと掃ってくれました。
 その夜は私も仕方なくまた毛布をかぶり寝ました。透明な赤い蛆虫がいないかどうかよくよく確認してからですが。

 次に透明な赤い蛆虫を見たのは、中学1年生の時でした。
 勉強が大嫌いだった私はよく宿題を忘れて、机の横に立たされたり座らされたりすることがありました。
 その日も宿題を忘れたということで、自分の机の横に座っていろと先生に言われ、教室の床に直接座っていました。
 その時、ふと、昔見た透明な赤い蛆虫を唐突に思い出したのです。
 なぜ思い出したのかはもう覚えておりませんが、「もしここに赤い蛆虫がいたりして……」と何気なく自分の制服のスカートの端をめくって床を見たのです。
 いたのです。透明な赤い蛆虫が。
 もこもこと小さい体を蠕動させて動いているのです。
「……えっ?」と私は驚き、目をそらしまた床に目を向けると、透明な赤い蛆虫が教室の緑色の床をもこもこと這っているのです。
 気持ち悪くなった私は、座っている場所を少しずらし、赤い蛆虫から目をそらし続けました。
「なんでここに? なんで学校の教室に?」
 授業の内容など頭になど入らなかったのは言うまでもありません。
 蛆虫に透明で赤い蛆虫などいるのだろうか……。
 そう思った私は少し図鑑などで調べてみたりしましたが、そんな蛆虫はいなかったように思います。
 それよりも、絶対にいそうにない中学校の教室で、私が「いたりして……」と思ったら現れた、ということがとても恐怖だったように覚えています。
 小学校低学年の時も、「夜寝ている布団に蛆虫がいたらどうしよう……」と考えたら、透明な赤い蛆虫が現れたわけですから。
 それ以降は、現在まで透明な赤い蛆虫は見ることはありません。
あれは、「いたらどうしよう……」と思う私の心が見せた幻視だったのでしょうか。
 頭の中がおかしくなったのかと思われそうなので、今まで人に話したことはありません。
 ホラーは好きですが私自身は霊感もなにもないので霊を見たとか、そのような体験はありません。
 唯一、私のありふれた日常の中での不思議な体験が、透明な赤い蛆虫です。
 文章が下手で申し訳ありません。ただただ、不思議な体験です。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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