悲しい廃墟

これは、僕が中学生になりたての頃のお話です。

当時高校1年生だった先輩と
甲信地方の昔火事になった隔離病棟に2人で言った時の話です。
その病棟の名前と地名は控えさせて頂きます。
その日2人でホテルを予約し、夜から行くと決めていました。
そして夜の8時お風呂を済ませて ライトと念の為スマートフォンを持って行きました。

山道をひたすら進み建物が見えてくると急激に恐怖が込み上げて来ました。
今回はあくまでも建物を見るだけ。
僕も先輩も肝試しという罰当たりなことをしてはいけない、
そう思っていたので少し見て写真を撮ったらすぐに帰る。
そう2人で話していました。
病棟は3階建てで上から見ると、六角型最上階に展望台のような所があるほど広い病棟でした。
周りはフェンスがあり、入口の扉はガラス出できていて
中がうっすら見えています。
ライトの光で照らすと、中には黒く焦げた壁や車椅子があってより不気味でした。
受付の奥はまっすぐ廊下があり、左に病室右には何かしらの部屋がありました。
部屋の名前や番号が見えないほど黒焦げだったので、
なんのために使われた部屋なのかもわかりませんでした。
少し進み左の病室を見ると101号室から105号室までありました。
104号室や4の字が付く部屋は四(死)をイメージさせるのでそもそも無い。
母が福祉の仕事をしていて昔そんなことを聞いたことがあるので、
頭でそのことを考えながらライトで見ていると、
後ろにいた先輩が急に「うわっ!」
振り返ると先輩は腰を抜かして驚いた顔で廊下の奥を凝視していました。
慌てて先輩に駆け寄り、
「どうしました?大丈夫ですか?」
そう言うと先輩は血相をかいて
「早く逃げろ!」
そう僕に言い僕は状況が掴めないので先輩に
「何を見たんですか!」
そう言うと先輩は
「ホテルに着いたら話す。」
その一点張りでした。

ホテルに着き先輩が落ち着いたところで言いました。
「さっき何を見たんですか?」
そう言うと
「さっきお前が照らしてた廊下の奥に女の人が宙吊りになって体が揺れてたんだ。」
そう言われた瞬間僕は震え上がりました。
その時先輩が
「まずい。急ぎ過ぎてライト落とした。」
「何やってるんですか。明日の朝取りに行きましょ。」
僕は病棟に戻るのは嫌だったので先輩にそう言うと先輩は
「いや、俺は後回しにするのが嫌いなんだ取って帰ってくるだけだから。」

そう言われて渋々病棟に戻ると
ライトは病棟の上を照らしたまま落ちていました。
先輩がライトを拾って戻ろうとするとまた先輩が「うわっ!!!!」そう叫びました。
僕は驚き先輩に言いました。
「今度はなんですか!」
すると先輩は「廊下を見ろ!」
そう言われ廊下をライトで照らしました。でも何もいません。
「何もいないじゃないですか。」
「何言ってんだよ!今俺たちの目の前に女の人が首吊ってるだろ!」
そう言われ入口から遠ざかって病棟全体を照らしてもやっぱり何もいません。
「先輩!しっかりしてください!ここには何もいません!」
思わず大声で叫ぶと 3階の展望台から視線を感じました。
直感的に複数人に見られてる。
そう思いとっさにライトを向けるとそこには黒焦げで全身血だらけ、
性別の区別もつかないような人達が20人くらい
こちらに向かってずっーと両手を振りながら
「助けてくれー!」
「頼む!助けてくれ!」
「熱い!痛い!」
などの苦しむ姿が目に飛び込んできました。
それは僕も先輩も目にしていました。
ですがそれはもうこの世に存在している人ではないとわかっていたし
助けようがないので先輩と一目散にホテルに逃げ帰りました。

ホテルに戻り時計を見ると10時を回っていました。
その日は2人とも疲れきってそのまま寝ました。
次の日の朝2人でお祓いに行きました。
幸い何の問題もなく帰ることが出来ました。

僕は恐怖ももちろんありました。
でもどこか悲しくなってしまい、
それ以降その隔離病棟のことについてこの話をする時以外深く考えないようにしています。
今現在は取り壊されてありませんが
そこの道は今でも心霊現象が度々起こるそんなことをその先輩からこの前聞きました。
結局の所先輩だけに見えていたあの首を吊っていた女性はなんだったのか
2人の間でも解決しておらず、
先輩の亡くなられた身内の方というにも
「あの女性に見覚えはない」というので
恐らく先輩に何かを伝えたかったのか
その土地をさまよう浮遊霊だったのかもしれません。

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-
朗読: 朗読やちか

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