イモムシ

これは数十年も前、私が中学の時、音楽の先生から聞いた話。  

その先生には警察の友人がいた。
仮にその友人をAさんと呼ぼうと思う。
そのAさんが当時、新米警官だった頃、担当区域で強盗殺人があったという。
その事件は、とある住宅街で、
ある3人家族が金銭目当と思われた強盗に皆殺しにされた、といった内容だった。  

Aさん曰く、その事件現場は悲惨なものだったらしい。
家中、金目のものがあった場所を全て荒らされ、
リビングの床には強盗によって殺害された家主たちの遺体、
ガムテープで全身グルグル巻きにされ、まるでミイラのような状態で、
血塗れになって転がっていたのだという。  

一通り現場検証は済み、遺体も解剖に回された。
ここからドラマだと、現場担当の人たちが署に行って、
やれ解剖結果が、犯人は…、とかになるだろう。
けど現実は、そうではなかった。
新米警官だったAさんと他数人の同僚たちで、
その事件現場に一晩寝泊まりすることになったのだという。
理由は、確か事件現場を他人に荒らされないための見張りだった気がする。  

Aさんと同僚の1人は、リビングで寝ることになった。
言わずもがな、この場所で寝れるはずもなく、
2人は深夜に差し掛かっても電気をつけずに、起きて喋っていた。  

深夜2時になろうとした時だった。
辺りがシーンと静まり返っていた時、外から砂利道を踏むような音が突然と鳴り始めたのだという。
ーージャリジャリ、ジャリジャリ。ジャリジャリ…  
Aさんたちは、パタリと話をやめた。
この時、野次馬か酔っ払いだろうと思い、
いずれか立ち去るだろうと気軽に考えていた。
ーージャリジャリ、ジャリジャリ。ジャリジャリ…  
あれから数十分経って、一向にその音の主は事件現場から離れようとしなかった。
おかしい、と次第にAさんたちはそう思い始めた時、
次々と不可思議な点に気づいたのだ。
リビングにいる2人には、ハッキリとこの奇怪な音が聴こえるにも関わらず、
2階にいる他の人たちは気づいている様子もない。
そして、その音の主は、2、3人ぐらいいて、足で砂利を踏む音ではなく、
何か這うようにして家の周りをずーっと行進しているようだった。
「オレ、見てくるよ」
と、好奇心に負けたAさんはそう言うと、恐る恐る窓の方へと近づいていった。

ーージャリジャリ、ジャリジャリ…
Aさんは、思い切ってカーテンを開けた瞬間、
その音の正体たちを見た時、情けない悲鳴をあげてしまったのだ。
「うわぁー!」  

まるでイモムシのようだったという。  

イモムシのように砂利道に這いつくばって、身体をくねらせる、3つの影。  

それは、強盗によって殺害され、
ガムテープでグルグル巻きにされていた家主たちだった。  

この話は終わり。
皆さん、半分フィクションと思ってほしい。  

ちなみに、この事件の犯人捕まったのかどうか定かではない。

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-
朗読: 怪談朗読と午前二時

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