消えかけた妹

 今から書かせて頂くお話は、幼少の頃の記憶を手繰り寄せた物なので、正確な記憶をそのまま書いた、とは言えません。
 また、かくれんぼ中のお話なのですが、本当はもっと大人数で、メンバーも増えたり減ったりしておりました。
 そのため、起こった不思議な出来事は事実ですが、その他の流れなど、記憶も曖昧であるため、創作で書いております。
 それでも良いと言う方は、是非読んで下さると嬉しいです。

 これは、私が7才、妹が3才頃の出来事です。
 私の同級生のお友達、Kちゃんが家に遊びに来て、妹も入れて3人で遊んでいた時の事。
 その日は、家に母のお客様が来ていたので、私達は裏庭で遊んでいました。お世辞にも広いとは言えない庭でしたが、幼い私達には十分なものでした。
「かくれんぼをしよう!」
 Kちゃんの提案で、私達は”隠れるのは裏庭だけ”と言うルールを作り、かくれんぼをはじめました。
 言い出しっぺのKちゃんが鬼になり、私は小さな妹を1人にするのは危ないと思い、2人一緒に隠れられる場所を探しました。

 当時、母が使用済みのオムツをまとめて捨てるために使っていた、子供なら2人余裕で入れる大きなポリバケツが置いてあったので、私達はそこに隠れて「もういいよー!」と言いました。
 私達はバケツの中で手を繋ぎ、体を密着させて、Kちゃんがあちこち探し回る気配を、2人でクスクス笑い合って楽しんでいました。
 程なくして、Kちゃんがバケツの蓋を開け「ちーちゃんみーつけた!」と言い、満足そうに笑っています。ちーちゃん、とは私の事。
「えっ!?」
 私は驚いて、辺りをキョロキョロ見回しました。

 Kちゃんが蓋を開けた途端、妹が、消えた。
 私は確かについさっきまで、蓋が開く瞬間まで。
 妹と手を繋いで、ぴったり体を寄せ合っていたのに。
 妹が、隣にいない。
 私は焦ってKちゃんに事情を説明しました。
「えー、それ本当?」と、Kちゃんは疑っていましたが、その後2人でどこを探しても、妹は居ません。
「本当にバケツに一緒に居たの?」
「そうだよ、本当に一緒に隠れてたんだよ!?」
「じゃあ妹ちゃん、どこに行っちゃったの?」
 2人で必死に考えましたが、答えが出るはずもありません。
 私達が、これはもう「大人に頼るしかない」と、母を呼びに行こうとした、その時。
「なんでおいてくの!?」と叫びながら、妹が、2人で隠れていたバケツの中から出てきたのです。
「「えっ!?」」
 私とkちゃんは訳が分からず、妹に駆け寄って『どこに行ってたの!?』と言うような事を、矢継ぎ早に問いかけました。
 だってそのバケツは、私が見つかった後、妹が居ないと分かっていながら、何度も蓋を開けて確かめたのですから。
 当の妹は、キョトンとして「自分はずっと、お姉ちゃんとここに隠れてじっとしていた。一瞬眩しくなったと思ったら、お姉ちゃんが居なくなってて「あ、お姉ちゃんだけ先に外に出たんだ」と思って、急いで自分も出てきた」と、説明しました。
 訳が分かりませんでした。
 私とKちゃんが見た現実と妹の話では、明らかに時間軸が違っているし、そもそもずっとここに居たのなら、何故私と一緒に見つからなかったのか……。

 この出来事を夕飯時に家族に話しましたが、「まあ、大変だったけど見つかって良かったじゃない」と、流されてしまいました。
 現在、無事大人になった妹は、このかくれんぼの事を一切覚えて居ないそうです。

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