扉の向こう

これは、私が中学生の時のお話です。

私は他校に友人が多く、よく遊んでいました。
そんなある休日、友人から「今日は親居ないから泊まり来いよ」と誘われました。
友人の両親は夜勤のある会社で度々、両親共に居ない日がありました。
私は二つ返事で承諾し、泊まりに行くこととなりました。
そして、夕方になり一度準備をし友人の家に向かいました。
友人の家は、そこそこ古い3階建てのアパートでした。
そこに、友人と妹と両親の四人で住んでいました。
私が家につくと、友人とその妹が待っていて、
三人でご飯を作ったり、ゲームを楽しんだり、お風呂に入ったりしました。
一通り済ませた後、午後11時頃、友人妹が「アイスが無いよー」と言ってきたので、
友人と私で近くのコンビニまで買いに行くことになりました。

アパートは一階部分は塀で囲われており、階段を降りた後、
アパートの正面の出入り口から出れる作りでした。
アパート敷地を出ると、左側に約500mほど先に某コンビニがあります。
友人と話していれば、500mなんて一瞬でした。
途中200m地点くらいに公園があり、その前に地域のゴミ捨て場所が設置してあります。
夜に外に出ることがあまり無い年代のため、ウキウキしていたのを覚えています。
コンビニに着き、わざわざ多めにお菓子やジュースを買い、買い出し者の特権だとか言いながら
ガリガリ君を二人で食べて、自身の中学の話や志望校の話をした気がします。
かれこれ、30分くらい話してしまいました。
友人が「やっべ!妹に怒られる! 」と半笑いで言いながら、
私も「早く帰って、アイスでも食べよう 」と続けました。
「またアイスかよ」などとふざけながらもと来た道を戻っていると。
「何あれ?」と友人が私の進行を片手で阻みました。
私も友人も視力があまり良くなく普段はメガネです。
ですが、その時は「まぁ一瞬」と考え、置いてきていました。
友人は100m先に見える白くてフワフワしたものを指差しました。
何かが飛んでいる?そんな感じでした。
私は「遠回りする?」そう聞くと友人は
「いや、この道以外はだと20分くらいかかる」 そう言うと、
「まぁ大丈夫だろ!」と続けました。
少し、早足になりながら進むとその白い物が何なのかはっきり分かりました。
ゴミ袋でした。
そこは、公園前のゴミ捨て場でした。
友人は「ヤバい。下向いて歩け。」と私に耳打ちしました。
私も「分かった」それだけ言い友人の後に続きました。
白い物が飛んでいる。
それはゴミ捨て場を漁っている髪の長い人多分女性?が
ゴミ袋を投げていたからでした。
何か叫んだり、ボソボソ何か言っているのが聞こえました。
私も友人もお互いの足が震えているのは分かりました。
向こうもこちらの存在に気付くほど、近くになり、本物の恐怖を感じました。
ジッと私達を見ている。
長い髪の間からキラキラ光る物が視界の端に映ります。
視界の端で確実にその女性を捉えたまま通り過ぎる間際、私は耐えきれず女性を見てしました。
その瞬間、目が合った気がして「ヤバい!」とだけ言い走り出していました。
友人も「おい!」と言いつつ私と同じくらいのタイミングで走り出していました。

急いで家に着き、鍵を開け、家に入り、全ての鍵を締めました。
その時の一連の動作は、今までの人生、これからの人生でも一番早く出来たでしょう。
友人が「やばかったなー」と少し笑いながらでも、足は震えながら言い。
私は「妹ちゃんには言わないでおこう。怖がらせるから。」と妙に冷静でした。

その後は、友人妹に遅い!と言われたり、バラエティーの録画を見たりしていました。
知らぬ間に寝ていました。
すると、玄関から「うわぁ!」とかなり大きな叫び声で目が覚めました。
深夜3時頃だと思います。
友人アパートの間取りは玄関入ってすぐの左にトイレとお風呂があり、
右側に各部屋がありました。
私は一目散に飛び起き、玄関に行くと。 友人が腰を抜かし、目を見開き、口をあんぐり開け、玄関扉を指差していました。
私は「どーした?」「おい!」「しっかりしろ!」等の言葉を掛けました。
友人は「ヤバい」「嘘だろ」「警察に」などと支離滅裂でした。
友人妹も起きてきて「なーにー?」など言っていました。
とりあえず、友人妹を自室に返し、出てこないでと念押ししました。
友人妹も私の真剣さに気圧され、渋々ながら戻っていきました。
友人が「あいつがそこに、いる。」そう言うのです。
私は「あいつって?誰よ?」寝ぼけているのもあり、そんな返答をしました。
「あの髪の長いやつ!」そう言われ、私は全身の毛が逆立つのを感じました。
「嘘。」「なんで?」そう聞くと。 「一回部屋に戻ろう」友人が逃げるように部屋に戻りました。
カタン玄関からそんな音が聞こえた気がしました。
私と友人は友人妹の居る部屋とは別の部屋に入り、こそこそと話はじめました。
「さっき、トイレに起きたんだよ。そしたら、玄関の郵便受けが何か動いてて」
「それでどうしたんだよ。」
「風かな?なんて思ってさ、押さえたらなんか挟まったから取ろうと思って」
「おう。それで。」
「覗いたんだ。そしたら扉の向こうの人と目が合ったんだ。」
「嘘でしょ。あいつ追っかけて来たのかよ。」
「それで腰が抜けて。倒れこんだんだ。」
「まだいるのか?」
「分からない。」
私は怖いことよりもなぜ追いかけてきたのかということに怒りを覚え
「なんか武器になるものある?」
中二病全開ということもあり、倒そうと思いました。
「バールならある」
「貸して」
バールを借りて、3,2,1バッ!っと玄関を開けましたが
そこには何も居ませんでした。
ですが、友人の部屋から公園の方向を見ると、ゴミ捨て場からこちらを向いてる1人の女性が立っていました。

後日談ですが、翌日警察に連絡し私の両親、友人の両親、警察で公園に向かいましたが 誰も居ませんでした。
ただ、荒れ果てたゴミ袋の残骸が残っていました。

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