感じる人と感じない人

私は病院で看護師として勤務しています。
病院とはいってもICUという特殊な部署で、
重症な患者さんを看護したりするような環境で働いています。
ICUから廊下を挟んですぐ近くには処置室の様な部屋があります。
その部屋の中は簡易のベッドが1つだけあり、
周りには使っていない医療機器等が置かれた物置のような状態の部屋です。
夜勤の際、仮眠に同時に2人入るときがあり、
寝る場所の加減でその処置室で仮眠をとることがあります。
その処置室は「出る」ことで有名で、スタッフの中には
どうしても恐怖のためその処置室で眠れない者もいるくらいです。

とある夜勤の日、私は例の処置室で仮眠をしました。
ちなみに、夜勤の際はその処置室で眠ることができるかスタッフ間で確認し、
「◯◯さんはそこで眠れるから処置室でお願いね」
「私は無理な人です」
などと話し合って寝る場所を決めたりします。
私はその処置室で仮眠をし怖い体験をした事がなく、
むしろ静かで寝心地がいいため処置室での仮眠を承諾し、入眠しました。
仮眠を終え仕事に戻り、別のスタッフAが入れ替わりでその処置室へ入っていきました。
しばらく経った頃、私はスタッフの飲み物や荷物がある休憩室へ水分をとりに入ると、
先程入れ替わりで仮眠に入ったAが休憩室のソファで寝ていました。
処置室で寝ていたはずなのになぜかわざわざ
布団を運んで寝る場所を移動していたので不思議に思っていました。
夜勤を終え、勤務を終え休憩室に夜勤スタッフが集合した際に
「なぜわざわざ休憩室で寝てたのか」を聞きました。
処置室は分厚目の引き戸がありその中にベッド、
ベッド周囲にはカーテンがありカーテンで完全にベッドを囲むことができます。
そのカーテン越しに誰かがAを見ているような気配があったといいます。
もちろんわざわざ仮眠中に覗きに来る人などいません。
最初は気にしないでおこうと思ったそうですが遂に恐怖で耐えられなくなり
部屋を移動した、とのことでした。

夜勤メンバーでその話を聞き、
「やっぱ出るんですねぇ」などと話しているとBが
「私もあの部屋で前寝とったとき、ベッドの下で誰かが座ってる気がして
怖くて寝られんかったからおんなじように途中から処置室を出て
休憩室で寝たことあるわ」と話してくれました。
私はというとAが仮眠に入る前、例の処置室で仮眠をしましたが、
いつも通り特に何事もなく仮眠ができました。
むしろICUのスタッフの歩く音や機械の音も遮断され快適なくらいです。
スマホをいじったり、音楽を聞きながら過ごし気づけば眠っていました。
処置室が苦手なスタッフからはよくそんな風に過ごせるねと驚かれましたが
私には全く何も感じないのです。

このように不思議なことにその日処置室は、
「何か」の気配が恐怖でその部屋に居られない者と
居心地良く居れる者とがいるのが不思議でたまりません。

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