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狩り宿の男-2-(※犬注意)

以下のお話の中には犬への虐待シーンがありますので、
そのようなものに耐えられない方はここで読むのをおやめください・・・ 【犬注意】

ある年老いた男が山の中で遺体となって発見された。
遺体には熊か野犬にでも食い荒らされたような跡があり、 ほぼバラバラの状態で見つかった。
当初、この老人の身元を示すものがほとんどなく、
身元判明には時間がかかると思われていたが、
思いがけない方面からすぐに身元が割れることとなった。
最初の遺体発見時に動物に食い荒らされた様子があったことから、
警察は地元の猟友会にも連絡を入れ、山での警戒を強めようとしていた矢先であった。
地元猟友会メンバーが山へ入るためのベース基地として訪れた、
通称「狩り宿」で、 おびただしい血痕を発見。
同時にここで暮らしていたはずのSさん(仲間内ではノテさんとあだ名されていた男)の
姿が見えなくなっていることに気づき、すぐに警察に連絡を入れた。
事件の関連性を調べるため、警察は「狩り宿」に残されていた血液や指紋と、
山で発見された遺体との照合を行い、
結果、遺体は「狩り宿」の主、 Sさんだったことが判明した。

この事件が異様さを見せるのはここからである。
Sさんはかねてより猟犬の訓練を生業としていたため
「狩り宿」の裏手には犬を訓練するためのフィールドがある。
実はそこから犬の死骸が大量に見つかったのである。
それもただの死骸ではない。
胴体が木の杭にがっちりと縛られ、その前にはドッグフードを入れた皿が置かれている。
まるで空腹の犬にエサを見せつけていたような状況だ。
そしてなにより異様だったのは、縛られた犬たちには頭がなかったことである。
水の入ったボウルを置かれた犬もいた。
その犬の周辺からは塩の袋が見つかっていることから、
おそらく縛り上げた犬に塩を舐めさせておき、
目の前に水を置いて何日もその状態にしたあと、 首を切り落としたのだろう。
現場の鑑識員たちをもっとも驚愕させたのは、
同じように杭にしばりつけたメス犬の前に、
手足や頭部が切断された仔犬の死骸がたくさん転がっていたことだ。
杭に縛られたメス犬と仔犬の毛色がそっくりだったため、これは親子ではないかと推察された。

警察は困惑していた。
これはSさんがやったことなのだろうが、当のSさんは死んでおり、どうすることもできない。
不可解なのは、切断されたはずの犬の頭部がどこからも出てこなかったことだ。
もしかするとSさんが頭部だけを外に持ち出したのだろうか?
それともこのフィールドのどこかに埋められているのだろうか?
それはわからなかったが、いずれにしろSさん死亡との因果関係は薄いと見られ、
フィールド内を掘り返すなどの探索はされなかった。
不可解な点が多かったものの、
Sさんの死に事件性はないと判断されたことから、捜査は打ち切り。
地元の新聞には単に山小屋の男が山で動物に襲われて死亡したという
小さな記事として発表され、 特に注目されることもなく、
この事件は一般読者の記憶からはすぐに消え去っていった。

Sさんの葬儀では、また一悶着があった。
身寄りのないSさんであったが、ハンティング仲間からは
「ノテさん=乱暴者」と愛され、 過去には犬の訓練で名人と呼ばれていた事もあるので、
Sさんを慕って葬儀をしようと言う仲間も多かった。
だが、例の現場を発見したメンバーからはSさんを裏切り者、
人にあらずと批難する者もあり、 葬儀には出ないという人も大勢表れた。
無理もない。ハンターにとって犬は相棒であり、もっとも大切な存在なのだから。
一部の有志によって執り行われたその葬儀において、もうひとつ不可解な話が飛び出した。
熱心にお経をあげた住職が、説法の時にこんな話をしだした。
実は亡くなったSさんは、1年ほど前にお寺に相談に来たことがあるというのだ。
やむを得ない理由から仔犬を殺して食べてしまった。
夜中に寝ているとその仔犬がイモムシのような姿で布団に這い上がってくる。
鉈を振り回してそれを追い払うのだが、そんなことをしているうちに
自分の手足もどんどん切り付けてキズだらけになったと言う。
元来幽霊やらオバケやらを信じないSさんだったが、
こんなことが毎晩のように続き とうとうお祓いのためにお寺の門を叩いたということだった。
だが当時、その異様な話を聞いて自分の力だけでは収まらないと感じた住職は
寺の本部に連絡し、後日お祓いをしましょうということで、
その時はお経を唱えて帰ってもらった。

ところが後日、Sさんの方から寺に断りの連絡が来る。
別なところに相談したところ、犬の霊をコントロールする技を教わったというのだ。
住職は非常に悪意のある嫌な予感がしてSさんをいさめたものの、
まったく意に介せず、とうとう寺には二度と表れることがなかったという。
Sさんの身に起きていた事を初めて聞いたハンター仲間たちは、
あの「狩り宿」の裏で行われていた犬の虐殺が、単なる虐待ではなく、
なにかの儀式だったのではないかと疑った。
「よし、明日、みんなで狩り宿へ行って調べてみよう」
「警察の検証は終わっているのだから、特に問題はないだろう。」
そう言ってハンター仲間たちに連絡をして回った。
・・・その晩である。
深夜、「狩り宿」は何者かに火をつけられ、
翌朝にはすべてが消し炭となってしまっていた。
「オレたちは、何かヤバイことに首をつっこもうとしているのだろうか・・・」
仲間の一人が消し炭を見ながらポツリとこぼしたのが印象的だった。

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