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狩り宿の男-3-

以前渋谷にある広告代理店で働いていたボクは(※【閉店の理由】参照)、
バブル崩壊で広告の仕事がめっきりなくなってしまったのをきっかけに、
広告業界から足を洗い、東京O田区にある医療系製品を作る会社の工場で働いていた。 (※【謎肉】を参照)

そこはバブル崩壊とは無縁で、小さいながらも忙しい毎日を過ごしていた。
ただ、社長が少し変わった人で、ワンマンだった。
毎週地方にある合気道の道場に通い、会社には神棚が置かれて毎日拝んでいた。 それだけならよくある事かもしれないが、問題はその合気道を名乗っている
道場の館長が怪しい人間で、その人が描いたというジョロウ蜘蛛や山犬などの
気持ち悪い絵を社長は何十枚と買い込み、社内に飾っている。
安くても一枚50万円ほどするそうなのだが、会社の倉庫にはそれがたくさん眠っている。
叩けばホコリの出る代物だろう。
ある時、その館長が会社に来たことがあり、社長と密談をしている声を偶然聞いてしまった。
あきらかに商品の効能を偽って商売をしろと勧めている。 悪質極まりない。
まぁその話は薬事法がうるさいからボツになったらしいが そんな信用できない男に、
社長は師弟関係で頭が上がらないのだ。

前置きが長くなったが、ウチの会社では以前からおかしなことが続いていた。
僕自身は、深夜残業の時に室内で左の足首だけが歩いているのを一瞬見かけた事がある。
ただ一瞬だったので見間違いだろうと自分に言い聞かせていた。
同じく深夜残業をしていた嵐の晩には、怪しい黒い影に追われたこともある。 (※【黒くて伸びる人】参照)
それだけではない。
社内で怪我をする人や謎の病気になって辞めていく人が後を絶たない。
それらの人は、みんな左側の腕にけがをしたり、左足の膝から下が動かなくなったり、
社内で転んで左足首を骨折したり、左側ばかりおかしくなるのだ。
しかも、あることに 気づいてしまったのだが、
神棚の正面の列に座っている人たちがみんなそうなるのだ。
社長もなんとなく気になったのか、
一度神社の神主さんを呼んでお祓いをしてもらったことがある。
地元でも有名な神社であったのだが、まったく効果はなく、
その後も怪我人や病人がつづいた。
気になるのは、神主さんが「神棚の扉は普段閉めてください。拝むときだけ開けてください」 と、
神棚の正しい作法を教えてくれたのだが、社長はそれが気にくわなかったのか 扉は常に開けっ放しであった。
たぶん例の館長からの指示なのだろう。

そうこうしているうちに社長自身が大病を患い入院してしまった。
その間に人事がどんどん動いて、得体のしれない人物を営業部長として雇い入れ、
それにともなって営業部や企画部などの人員がどんどん入れ替わって行った。
新しく雇われた人間たちはどこかおかしい。
一緒に出社して、一緒に帰る。常に一緒。
そして神棚をいつも熱心に拝み、例の気持ち悪い絵にも手を合わせるのである。
おかしな人間たちが社内にぞろぞろと増え始めていた。
ボクは毎日がうすら寒く感じるようになり、退職を考え始めていた。
そんなときにボクに声をかけてきたのがX氏である。
彼はジャーナリストで、 とある事件を追っていた。
彼はハンティングを趣味とし、狩りの仕方や銃の扱い方など幅広い知識をもった方で、
その筋から地方で起きた「狩り宿の主」の死亡事件を追っていた。 (※【狩り宿の男】【狩り宿の男-2-】を参照)
彼の調べでは狩り宿の主であるノテさんは、死亡する直前まで犬を使った儀式をしており、
これは呪術に違いないと踏んだX氏は、その手の方面を調べつくしたところ、
ノテさんと例の合気道の館長につながりのあることが分かったという。
また一枚の写真をボクに見せてくれた。
そこには今会社で企画部として働いている女性が映っている。
数年前にとある宗教団体が入院中だった教団幹部を無理やり連れ出し、
のちに死体で発見された事件があったのだが
(※身バレの危険があるため詳細は語れません)
その時の教団スポークスマンとしてマスコミ対応していたのが彼女だったのだ。
戦慄が走る。
教団はその事件をきっかけに解体されたと思っていたのだが、
その教団の人間が社内にはびこっている。
彼らは合気道の館長とつながっている。
そして館長は呪術をやっていたノテさんとつながっていた。
社長は今、謎の症状で入院している。
教団のやつらは以前仲間の幹部を入院先から連れ出して死亡させている。
同じことが社長の身にもふりかかるのではないだろうか?

X氏は、さらにこう付け加えた。
「今の社長が死ねば、会社内で勢力をつけた教団の人間たちが、 やがて例の館長を社長として迎え入れることになるだろう。
キミの会社は乗っ取られるのだよ。」・・・と。
ボクの会社は医療系会社で全国の医師とつながっている。
この会社が乗っ取られると、日本の医療の裏側に怪しい存在が はびこって行くことになるだろう。
どうやらボクは今、とてもヤバイ立ち位置にいるらしい。
・・・が、仕方ない。 まずは、あの神棚を粉砕するところから始めるしかないようだ。

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