初夢

これは、俺が今年見た初夢の話。

俺は初夢なんて毎年基本は見ないし、
ここまで印象に残った夢もそうそうないのでよく覚えている。
夢は、どこか行ったことのない雪山の山荘から始まった。
俺は、小さい頃から関東に住んでいて、雪や山とはほとんど無縁の生活をしていた。
スキーに行ったこともないし、東北に旅行に行ったりとかすることもなかったので、
雪山の山荘をどこかで見たこともない。
そこには、俺を含めて3人の男性と、4人の女性がいた。
この人たちも、全く知らない人で、年齢もバラバラだった。
だが、俺は一人の少女が妙に気になった。
別に、知り合いの小さい頃に似てたとか、
近所の小さい子に似ていたとかじゃなくて、本当に、ふと気になったんだ。
まあそこでの会話はよく覚えていないんだけど、とにかく楽しかった。
感覚的には、時間が全然立っていない気がして、
内容は全然覚えてないはずなのに、すごく楽しかった記憶がある。
しばらくすると、みんな話疲れてきて、今日はもう寝ようということになって、
丁寧に用意されていた個人の部屋で、その日は就寝した。

次の日からが地獄だった。
まず、日が暮れたあとから始まったものだと思っていたから気にしていなかったんだけど、まず山荘の周りが暗い。
全体が暗いというか、山荘のところだけスポットライトで照らされている感じ。
周りで見えるところは、一面雪に覆われていて、真っ白。
なのに、太陽の光は見えない。
それから、異様な匂い。
恐らく実際嗅いだことはないんだけど、人が腐るとこんな匂いがするのかと直感的に感じて、
「ああ。人が殺されて、腐っているんだ。」と、口に出した。
そこから次々と人が起きてきて、一通り状況を説明したあと、
女性の一人がいないことに気づいた。
このとき不思議と、みんな落ち着いていて、
「ああ。あの人が殺されたのか。」というふうな感じだった。
案の定、その女性の部屋に行くと、女性の死体が腐った状態で見つかった。
というか、根本的に人が殺されても、
腐敗はそんなにすぐに進むわけはないんだけど、何故か妙に納得した。
その女性を埋葬し、誰が犯人かと話し合ったが、
結局見つからず、就寝の時間になった。

その日を境に、翌日は男性、その翌日は女性と次々殺されていって最後は俺と、
最初に言った女の子だけになってしまった。
その日の夜になって、布団に入って考えた。
なぜ一番抵抗力のなさそうな少女を最初に狙わなかったのか。
なぜ大人たちから殺されていったのか。
そこで俺は一つの答えにたどり着いた。
少女が殺人を行っていれば辻褄が合うのではないかと。
少女が殺人を行っていれば、最初に疑われることもないし、
最初に少女が殺されなかった理由もわかる。
その時、俺の頭上に光る刃物と少女の顔が見えた。
目と鼻の先、顔に刃が当たる寸前で、誰かに呼ばれた気がして目が冷めた。
その声はどこか暖かくて、懐かしい感覚がした。

目が覚めると、俺はいつもの自分の部屋にいて、きちんとベッドの上にいた。
呼吸が荒い。 まだあの夢の感覚が残っているようだ。
でもあの夢から戻ってこれた。
あの声。 あの声は未だに誰の声だかわからない。
でもどこか懐かしさと、暖かさを感じるあの声に助けられたんだと思う。
あの声がなかったら、あの夢から戻れなかったかもしれない。
俺は安堵し、ベッドから降りると、着替えるためにタンスを開けた。
初夢は恐ろしい内容だったけど、戻ってこれたから、どこか清々しい気がした。
着替えが終わり、自分の部屋を出ようとする。
その時、はっきりとした声が聞こえた。
「次はお前だったのに」 と、あの少女の声だった。
次あの夢を見たらと思うと、今度の初夢が怖いです。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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