​鍾馗様

小学生のころから不眠症で悩まされていました。

寝付くまで時間がかかるのです

ベットのなかで目をつむりながら朝が来るまで意識があることもしばしば…

10歳にも満たないころからの事だったのでそれが普通で

みんなそうだと思い込んでいました。

また、中学生になり悪夢を見ることがたびたびありました

少ない睡眠時間をさらに悪夢が襲います

まさに精神的に一番沈んでいたころの話です

悪夢の内容についてですが

霧がかかったように内容を思い出せなんです…

しかし”怖い”という意識だけが残り起きる

そんな折り、地域の伝統行事で使う

私の衣装を親が購入してきました。

その衣装にはおまけで一枚の絵がついてきました

立派な髭をたくわえ、剣を持ち、

ギョロとした目を光らせる大男の絵です。

なぜだか私はその絵が気に入り

自分の部屋の真ん中に飾ることにしました。

そして何日か過ぎ

夢を見ます…

悪夢です…

それも今回ははっきりと…

両親の寝室に私はいます

そして目の前には

髪の長い女の生首が浮遊している…

目を見開き叫んだ瞬間

家中が洪水のように水浸しになる…

怖い…

訳のわからない状況だがただ怖い…

その感情だけが私を支配していました。

震えている私と生首の女の目が合います

殺されると思いました…

しかし次の瞬間

剣を持った大男がその浮遊する生首を

一刀のもとに屠るのです。

そして悪夢から目が覚めました

異常なまでの汗をかき私は起きました…

助かった…

後で分かったことですが

いただいた絵は

鍾馗様(しょうきさま)といい

玄宗皇帝という唐の9代皇帝の夢の中に現れて

皇帝に取り憑く多くの悪鬼を退治したとういう逸話があるそうです。

そして

その図像は魔よけの効験があるとされるそうです。

私は鍾馗様に助けられたのだと今でも思っています

その日以降悪夢を見ることはなくなり

その絵もどこかへいってしまいました。

私にとっては大変怖く不思議な話でした。

朗読: 繭狐の怖い話部屋
朗読: 怪談朗読と午前二時

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