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郵便配達の家

僕は郵便配達の仕事をしてるのですが、
郵便外務の社員はある程度勤続年数が経つと、転勤のようなものがあったりします。
なのでかつて勤務していた地域にあった、
いわゆる「いわくつき」の家について、話したいと思います。

住所表記があるならどんな家にでも郵便配達をする、僕たち郵便局社員にはあるある話だと思うのですが、
「この家、本当に人住んでるのかな?」という家が結構、いやかなりあったりします。
郵便局の性質上、半分崩れていようが 人里はなれていようが、
転居届を出してもらってないと「住んでいる」として配達をしなければいけないのです。
例えば、これは今現在配達している地域なんですが、山奥の小さな集落の林の中、
家とも小屋とも言えないほど 「小さい」家があったりします。
この地域は生活の足として車は必需品で、公的交通手段もほぼありません。
にもかかわらずその家?には車はもちろん自転車も見当たりませんでした。
配達するのは道なき草むらをむりやりバイクでつっこんでいくのですが、
その家の大きさは、イメージとしては バス亭の簡易待合所ぐらい。
トイレも風呂も絶対にない大きさです。
ただ、その家にはちゃんとポストが ついていて、
ガスボンベも備え付いていたのでだれか「住んでいる」のです。
郵便は年に一回あるかないか 程度でずっと本当に住んでいるのか疑問だったのですが、
一度だけ、住人と思われるおじさんに郵便を手渡ししたことが ありました。
その方はいたって普通。
軽く挨拶してご苦労様と声をかけてもらいました。
いままで違和感だらけで不気味だったその小さな家は、
「ひとが住んでいる」とわかっただけで すごい変わった家だ、という認識にかわるのです。

話を戻しまして、その問題の家は新しくも古くもない、市街地の小さな住宅街の一角に建っています。
初めての地域を配達する時には必ずその地域の精通者の後についていって、
配達の順番やポストの位置、そして その家についての注意事項などを教えてもらいます。
よくあるのはバイクで敷地内に入るな、とかですね。
一目見て異質で異様な外見のその家は、
建物自体はしっかりしているのに草木が生い茂り、窓ガラスの向こうの麩はボロボロ。
上記のとおり、住んでいない、という届出を出されない限り郵便は配達しなければいけないため、
玄関前のポストは何年分でしょうか、パンパンに郵便が突っ込まれていて、
ドアの隙間という隙間に郵便やチラシがねじり込まれています。
ほぼ間違いなく誰も住んでいないであろうにも関わらず、
郵便は結構な頻度でやってきていました。
こういった「人が住んでいない」家には普通、郵便の量も減るものなので、
何百通もの郵便、チラシが散乱する様は 長い郵便配達人生でも近寄りがたい、違和感、
つまりは大変「気持ち悪い」家でした。
気持ちわるいなあ~と思いつつ、
先導してた20そこそこの若い社員が自分のもとにやってくると、明るい口調で
「てな具合で、郵便は適当に挟んじゃってください。
あと、破れた麩から中は覗かないでくださいね」 と言われました。
え?と思ったのですが、初めての配達で、
若い社員のジョークだと思った自分は
「なに、どういうこと?」
と、ちょっと引きつった感じで理由を尋ねました。
すると、その社員もこの地域を覚えるときに先輩社員からそう教わったから、だそうでした。
怪談的には中を覗くと面白かったんでしょうが、少なくとも勤務中、
制服を着た状態でそのような 不審者的行動を取るわけにも行かず、
結局僕は6年間、その地域を配達していました。
またその家で殺人や自殺といった霊的ないわくは聞くことはありませんでした。

ただ、その家の真ん前に建つ、この住宅地では一番大きな家の方と話す機会がありました。
いわくの家にいつものように郵便を放り込むように配達したあと、
外で車を洗っていた 次の家のその住人に郵便を渡しました。
「郵便配達おつかれさん、色々と大変だねえ」
「いえいえ、ありがとうございます。でも、やっぱり、気持ちわるいですよねえ?」
「気持ちわるいよwwでも住んでたooさんとも面識ないからねえ。  
とっとと売り払ってくれればいいのに、なんだか絶対に売らない、ってごねてるらしいよ」
「こんなとこ買いたいとかいう不動産屋なんているんですねww」
「一応市街地だしね。売れない、ならともかく売らないって、・・・気持ちわるいよね・・・」
確かに、売らない理由がなにかあるのか?と考えるとゾクっとした瞬間でした。

この家はいまも変わらずそのまま残っています。
売りに出された、という話も聞いたので、 つい最近用事ついでに見に行ったのですが、
売られたのかどうかはわからなかったですが、 あいもかわらずボロボロで、
破れた麩の向こうは真っ黒でした。

数年ぶりに見に行った記念に、拙い文ですが投稿させてもらいました。

朗読: 怪談朗読と午前二時

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