神社の白狐

私は子どもの頃から怪奇現象や不思議な体験をしてきました。
今日はその1つをお話しします。

今から10数年前のことです。
当時私は、保育園児の息子を連れて離婚し、実家で暮らしていました。
ある日、ふと夜中に目を覚まして起き上がり、
何か気配を感じて窓のほうを見ると、窓の外にとても大きな白い狐の顔が有りました。
窓は高さ約90×幅約180cmの腰高窓ですが狐の顔はそれより大きく、
部屋の中から見えるのは鼻先から目元や口の端の辺りまでで、顔だけでも窓枠を優に越える大きさでした。
あり得ない出来事にベッドの上に座ったまま硬直しながらも狐を観察し、さまざま考えを巡らせていました。

真っ先に思ったのは『食われる』でした。
狐のあまりの大きさに恐怖を感じたからです。
『逃げなきゃ。でもヘタに動いて向こうを刺激するのはまずい』
『横に眠る息子をかかえて逃げられるだろうか?』
狐の視線から息子を隠すようにしながら、しばらくの間、狐と見合っていました。
『顔は斜め横なのに、狐の口だけでも窓の左端から右端まである。
全体だとどれだけ大きいんだろう?
少し開けた口からは、赤い歯肉が見えている。目は金色。知能が高そうだな』
などと観察している間、狐はじっと私を見据えるだけで、全く動きませんでした。

どれくらい時間が経ったのか。
私は緊張で疲れたのか意識を失っていました。
朝に目を覚ました時は『昨夜は変わった夢を見たな』くらいにしか思わず、特に気にしていませんでした。
ところが次の日の夜、夢の中に昨夜の狐が出てきました。
夢の中では私が怖がらないように気を遣ったのか、人間の姿をとっていました。
平安時代の貴族の男性のような衣装を身に纏い、
人間の成人男性の姿になった狐を美しいと思いました。
夢の中の狐は優しくとても物知りで、話しながらいろんな所を散歩しました。
どんな質問をしても解り易く説明をしてくれて、私が納得する答えを返してくれました。
宇宙の成り立ちや真理など、生身の人間には知り得ないようなさまざまなことを教えてくれたように思います。
毎回楽しく充実した時間を過ごすのに、
目を覚ますと具体的にどんなやりとりをしていたのかは忘れてしまうのです。
そんな夢を見る日が何年も続きましたが、所詮は夢ですので誰かに話すことはしませんでした。

ところがある日、妹と母から
「お姉ちゃんのとこに狐が来てるんだって」と言われました。
何の用が有ったのか、妹と母が霊能者の所へ行ったそうなのですが。
相談が終わると、相談内容とは全く関係が無いにもかかわらず、母に向かって
「長女(私)の所にお狐様がしょっちゅう遊びに来てるな。
気に入られてるんだな。銀色がかった白い狐で、すごく大きくてしっぽが2本ある。
綺麗で立派なお狐様だ。あんたの家の近くの稲荷神社のお狐様だな」
と言ったそうなのです。
それを聞いた私は、とても驚きました。
単なる夢だと思っていたのもありますが。
稲荷神社の御使いが狐というのは人間が考えたことで、
現実には神様の御使いなんてものは存在しないだろうと考えていたからです。
私が
「稲荷神社の狐が遊びに来てるのって、良いことなの?悪いことなの?」
と母や妹に訊いたのですが、
「判らない。ただ『遊びに来てる』って言われただけ」とのことでした。

ちなみに、ある事があってからはその夢は見なくなりました。
今は遊びに来てくれていないのだろうと思います。
神様の御使いというものは本当にいるのでしょうか?
『霊がいるのだから、そういうモノもいるのかもしれない』という気持ちと、
『そんなものは人間が都合よく考え出したものなんだから、いるわけがない』
『神様とは関係なく、自然霊の一種とか?』
などと色々考えてはみるものの、答えは解らずにいます。

余談ですが。 その稲荷神社は創建がかなり古く、
千年以上前の文献には「いにしえより伝わりし云々」とあり、
当時ですら古すぎていつから在るのか判らない…という神社です。
その神社とその周辺は、昔から怪奇現象が頻発する場所です。
小高い丘になっている神社の境内は、中世にはお城が在りました。
戦国時代に騙し討ちによって落城したのですが、
現在でも続く怪現象を鎮めるために法要が行われています。

今回の話とは別に、落城した城主にまつわる怪奇現象も物心つく前から体験してきましたので、機会があればお知らせいたします。

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