滑る人影

これは私が中学2年生の時に体験した出来事です。
オチは無いですが聞いてください。

私は中学生の時、吹奏楽部に所属しており平日は日が落ちるまで練習に打ち込んでいました。
この吹奏楽部には一つ特徴的な事がありました。
「戸締り係」という練習の後、ミーティングをする前に5人で校舎中の窓閉めをするというものです。
私はこの係を任されていました。

冬のある日、練習後いつものように音楽室のある3階から1階へとチェックし、ミーティングへ向かおうとした時、
2階の男子トイレのことを忘れていた事に気付きました。
他のメンバーを先にミーティングへ向かわせ 1人で確認に行くと、
男子トイレの1番奥にある窓の鍵が空いておりそれを閉め、
「よし、急いでミーティングへ向かおう。」 と振り返った時です。
トイレの入り口の磨りガラスの壁に、通り過ぎる人影が映りました。

その人影を見た時、私はおかしな事に気付きました。
その人影は歩いていると言うよりスーッと平行に滑るように移動しており、
さらに妙な事に足音が全くしなかったのです。
急いでトイレを出て廊下を確認しました。
しかし廊下には誰もおらず、階段を昇り降りする音も聞こえませんでした。
ミーティングへ向かい、部員達に
「さっき2階の男子トイレの前、誰か通った?」と聞いても誰も心当たりがなさそうな様子でした。
この時、私はナニか不吉な物を見てしまったのではないかと思いました。

次の日、友達と話している時にさり気なく、
「なぁ、うちの中学ってなんか七不思議とか怪談話とかそういうの無いっけ?」
と聞くと友達は、
「なんかあるっけ……?あぁ、1個だけ知ってるかも。
幽霊が通る道が校舎内にあるーみたいな話なら聞いたことあるわ。」
と答えました。

この時嫌な予感がしましたが、
「それって校舎のどこらへんにあるか知ってる?」 と聞いてみました。
すると少し思い出すような仕草の後、友達が 「確か、2階の廊下?」と一言。
私は全身に鳥肌が立つのが分かりました。
顔は引き吊っていたと思います。 友達が知っていたのはそれだけでした。

それからは部活の後に校舎をチェックする時、2階には誰かと一緒に行くようにしました。
部員の皆はそのことを不思議そうにしていましたが。

結局、あの滑るように動く人影を見たのはあの時の一度のみでした。
あれは一体何だったのでしょうか?
何年もたった今、知る術はありません。

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