夢の中にて

初めてこのような投稿をしますので、うまく伝わるかどうかわかりませんが、 書いてみようと思います。

僕の母方の家系は霊感が強い人が多く、僕の母親もご多分に漏れず昔から霊感が強い人でした。
そんな母親が体験した話です。
大学で実家のあるH県から県外で下宿生活を送っていた僕が、
長期休みの際に帰省した時に母親が次のような話をしてくれました。

この前玄関をドンドンと叩く音で目が覚めた。
「こんな時間に誰だろう」と思ったけれどあること気づいた。
今のうちの玄関は10年前に建て替えて洋式の扉になっている。
しかしあの玄関は建て替える前の古い家の木造のガラス戸を叩く音。ただ自分が寝ている寝床は今自分が寝ている寝床に間違いない。
「これは夢の中だ」と気づきながらも、玄関に向かった。
扉を開けるとそこには小さな子供が立っていた。 男の子か女の子かも判断がつかない小さな子供が。
そこで目の前が真っ暗になった。

次に景色が目に入ってきた場所はどこかはわからないデパートのような建物の中。
見渡す限りでは人は見つからない。
ここはどこだろうと不思議に思っていると、自分の背後に誰かいる気配がして振り返った。
するとそこにはさっき玄関にいた子供が立っていた。
「怖い」や「やばい」といった感情はまったくなく、ただ「どうして私とこの子だけ?」 といった不思議な感情だけが芽生えた。
私は「他にも人がいるんじゃないか」や
「とりあえず歩いてみよう」などと考えたのかはわからないが 建物の中を歩きまわった。

その間その子供はずっと私の後を着いてくる。
いくらなんでも見ず知らずの子供にずっと着いて来られるとだんだんと「怖さ」に似た不快感が生まれてくる。
そこで私は「この子を巻こう」と考えた。 歩くスピードを速め、子供を引き離した。
これがあの角を曲がれば巻けると思い曲がり角を曲がったら曲がった瞬間思わず「ヒッ」と声が出た。
曲がった先に子供がいたのだ。
ここで初めて「恐怖」の感情が芽生えてくる。 すぐに引き返し走った。
いくら建物内を走りまわっても角を曲がったりすれば目の前に子供がいる。
階段で階を変えてもその先にいる。
建物内にエレベーターがあるのがわかりすぐさまエレベーターに乗り
自分が今いる階も行先階をどこにしたかも忘れたけれど行先階のボタンを押し「閉」の扉を連打した。
エレベーターが行き先階に着いて扉が開く。 開いた扉の先に、子供がいた。
さすがに諦めかけて「何?どうしたの?どうしてほしいの!?」と子供に叫ぶように問いかけた。

といったところで本当に目が覚めた。 恐怖からなのか涙を流していた。
一体なんだったんだろうと思い、自分より霊感が強く、
たまに心霊体験に関して相談を知り合いに一連の夢の話をした。
するとその知り合いがしばらく私をじっと見つめ考えこみこんなことを聞いてきた。
「あなた何人兄弟?」と。 あんた(僕のこと)も知っている通り私には兄と妹がいるから「3人兄妹」と答えた。
しかし知り合いはその答えを聞くなり「いや。違うはず」と言った。
”何を言ってるんだこの人は”と思ったけど「どういうこと?」と聞くと
知り合いは「おそらく、あなたには生まれてくるはずだったけどこの世に生を受けられなかった弟か妹がいるはず」 と言った。
もちろんそんな話、あんたのおじいちゃんやおばあちゃんからも聞いたことはない。
知り合いはこう続けた
「その子はご両親に自分のことを忘れてほしくなかったんだと思う。  
それで兄弟の中で一番霊感の強いあなたなら気づいてくれると思って夢の中に出てきたんだと思う。」と。
それがもし本当だったら何であんな怖い知らせ方だったんだ。と思ったが少し考えたらそうじゃなかったかもと思った。
あの子供は私に何か伝えようとした。けれど私は聞こうとしなかった。
聞こうとしなかったばかりかどこに行ってもどこに逃げてもそこにいる子供に恐怖を感じ叫んでしまった。と。

で、おばあちゃんに夢の話と知り合いの話をして聞いたところによると、
私が生まれて私の妹、あんたの叔母ちゃんが産まれてくる間に一人産んであげられなかった命があったって。
中絶ではないけれど流産の理由は聞けなかった。
ただおばあちゃんも、おじいちゃんも悲しすぎたのと、私とお兄ちゃん、
あとその後産まれてきた妹のこともあって その子のことを考えないようにしていたみたい。
あんたも知っているようにあんたのおじいちゃんは信心深い人で、
親族の月命日にはお仏壇の前でお経を唱えているでしょ?
だからおばあちゃんとおじいちゃんに産まれてこれなかったその子のために月1回お経を詠んであげて。ってお願いしたの。
おじいちゃんは「わかった約束する」と言ってくれた。
今度もしまた夢にあの子供が出てきてくれたら姉として話聞いてあげようかな。
と母は話を終えました。

この話を聞いてから10年以上経ちますが約束通り毎月お経を詠んでいた祖父母も他界しました。
母は毎月祖父母のお墓参りに行っています。
その時産まれてこれなかった弟か妹の分もお参りしているそうです。
そしてあれから一度も夢には出て来てくれなかったそうです。

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