虫の知らせ

これは私が17歳位の時の話です。

私の母の友人のSさんという人がいました。
私が小さい頃から母と交友関係があり、家族ぐるみで付き合いがあってお世話になっていた人で、
Sさんは裏表が無く他人の為に尽くす事が出来る評判の良い方でした。
そんなSさんが脳の病気に倒れたのは私が高校3年生の夏頃だったと思います。
それまでとても元気にしていたし、
たしか40代後半くらいだったので本当にびっくりしたしショックだったのを覚えています。

そしてSさんが入院して数ヶ月たったある日の放課後、友達と雑談しながら、
当時自転車で最寄りの駅まで通学していたので自転車置き場に向かいました。
自転車置き場に着いて自分の自転車にカバンを入れようとしたとき、
なんとなくいつも持ち歩いている鏡が気になって
カバンから取り出してフタを開けて、私は思わず「えっ!?」と声をあげた。
そばにいた友人が「どうしたの?」 と不思議そうにこちらをみてきたので私は友人に鏡をみせた。
バリバリにひび割れた鏡をみて友人も 「あっ!」と声を上げる。
そして、友人は続けてこう言った。
「鏡が割れるって不吉な事らしいよ。」
そんな言葉に私も少し動揺した。
なぜなら鏡にはフタがついているし、カバンをおとしたり衝撃を与えた覚えはないのに鏡が割れていたからだ。
とは言えあまり気にするのも良くないななんて思って、
学校を出て、家の方向が違う友人とは別れて自転車で
学校の最寄りの駅から電車を乗り継いで1時間かけて自宅に帰って来た。 

家についてドアを開けると家族達は出かけていて誰もいないようだった。
私は洗面所で手を洗った。
ふと洗面台の後ろの棚にいつも置かれている母の手鏡が気になってて鏡を持とうとした瞬間
私は手を滑らせて鏡はあっという間に床に落ちてバッリーーンと大きな音を立てて 床に鏡の尖った破片が散らばった。
私は一瞬立ち尽くした。
頭の中に浮かぶのは一時間前に友人に言われた言葉
鏡が割れるって不吉な事なんだよ
1日に二度も鏡が割れた事等17年間1度も無かったし、何か私は恐ろしくなってきた。

母の鏡もまた母が独身時代に買ったもので、
フレームもけっこう重厚な作りで簡単に割れるような作りの物では無かった。
奇妙な違和感と恐ろしさを感じながらも
家族が帰って来る前に目の前の鏡の破片を片付けないと危ないなと思い
掃除機を引っ張り出してウィーーンと大きな機械音が洗面所に鳴り響いた
その直後母が帰って来て、
「どうしたの?」と話しかけて来た。
私は廊下に背を向けながら掃除機をかけていて、
更に掃除機の大きな音で母が帰って来たのに気づかず急に後ろから話しかけられて鏡が割れたきみの悪さも相まって
「わっ!びっくりした」と声を上げた。 

なんだお母さんか!と内心少しホッとした。 
掃除機を止めて、鏡を割ってしまった事を謝ったあと、
学校で自分の鏡も割れた事友人にいわれた事を母に話していると電話が鳴った。
母が電話を取るとSさんの容態が悪化した事を伝える電話だった。
私は母からその事を伝えられ、ゾっと背筋が凍ったのを今でも覚えてる。

それから数週間経ってSさんは病院で息を引きとりました。
あの日、二度鏡が割れた事とSさんの容態が悪化した事は何か関係があったのかは今でもわからないけど、
1日に二度鏡が割れた事はあの日以前も、あの日以降もニ度とありません。

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