接触

これは、時代が昭和から平成に変わる2年ほど前のころに母が体験した話です。

夕食の材料を地元のスーパーで購入し終えた母は

いつも通っている国道を車で走行していました。

国道から分岐して自宅へと続く道路へ曲がる交差点まであと100メートル弱。

前方に見える信号が青から黄色に変わり始めた。

「あの交差点の信号は待ち時間がやたら長い。足止めされたくない」

そう思った母はスピードを出そうとしてアクセルを踏み込む。

その直後、

脇道から急に軽自動車が猛スピードで母の車の方へ突っ込んできました。

脇から飛び出してきた車の姿が視界の端に入った瞬間

母は「(あっ!!!……)」と、心の中で大声を出したそうです。

死角から急に飛び出してきた車を回避する余裕などもちろんありません。

その瞬間です。

ふと気づくと、

どういうわけか特に何事もなく車を走らせている自分に気づいたそうです。

このときの出来事を母は以下のように語っています。

母「よく分からんけど、飛び出してきた車が自分を通り抜けた気がするんよ。」

自分「何ゆっとるん。そんなことあり得んやろ。」

母「ほんとよ!嘘やないって」

自分「ほんと?夢でみた話とかじゃなくて?」

母「よく分からんのやけど『あっ!!』って思った瞬間、

  自分の車と相手の車がすり抜けたんよ。”スーッ”っていう感じやった」

母は

「自分の車と身体が相手の車をすり抜けた感覚がある」

「すり抜ける瞬間を”スローモーションで見ている”ようだった」

という点だけは信じて疑っていない様子でした。

たとえば、「火事場のKUSOヂカラ」なんて言い方がありますよね。

命が危険にさらされた真実の瞬間やのっぴきならない緊急時に

人間は普段出したことのない信じられないような”チカラ”を

無意識のうちに発揮してしまったりすることがあるといいます。

”制限されていたリミッターが外れる”なんて言い方もありますよね。

母は一瞬の出来事に「あっ!!終わった……」と思った直後に

”すり抜け”を体験したと今でも言い張っています。

本当に起きた出来事なのかどうかは分かりませんし、確かめようもありません。

ただ、母の中ではそれが真実になっているということです。

世界は説明のつかないことや常識では考えられないような現象が

実際に起きているし、因果関係が明らかにされていないことの方がむしろ多いですよね。

もし、物質が意思の力によって瞬間的に”量子状態”になることが可能であれば、

母の体験したとする「緊急回避行動」も現実に可能なのかもしれませんが……果たして……?

この話を皆さんはどのようにお感じになられますか?

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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