巻き戻り

私の家族はみな霊感があり、奇々怪々な出来事に見舞われることが少なくありません。
その中から一つお話しさせていただきます。

これは私が中学一年の夏に体験した話です。
私はいつも登校時間に間に合うために7時20分にベッドから起きていました。
その時間を超えてしまうと、遅刻してしまいます。
しかし、私は寝るのが好きで、特に二度寝が心地よく眠れて好きでした。
なので、6時ぐらいにアラームをセットし、二度寝を自発的に行っていました。
その日は特に誰の命日であったとか特別な日でもなく、
最近変なことがあったわけでもなく、なんでもない日のはずでした。

目が覚めました。
ベッドの右側にある窓から見える空は、厚い雲が空を覆い今にも降り出しそうな天気だったのを覚えています。
左に寝返りを打ち、すぐ横の机の上にあるデジタル時計をこちらに向けました。
「6時25分」
6時半にアラームをセットしていたのを消して、7時に切り替えました。
そして、いまだ残っていた眠気に導かれるまま眠りにつきました。

目が覚めました。
空は変わらず曇り空のまま。そして、デジタル時計を見ました。
「6時35分」 まだまだ起床時間には遠く、目をつむりました。

目が覚めました。 曇り空。デジタル時計を見る。
「6時50分」
また眠る。

目が覚めました。 曇り。時計。
「7時30分」
「うわっ!遅刻だ!!」
目が覚めました。 私は飛び起きたように上半身を起こしていました。
慌てて時計を見ると、
「6時50分」
その時間を見て、寝坊の前に見た時間を思い出しました。
いま寝たら遅刻する? 訳のわからぬまま、そんな気がしました。
そしてベッドから起き上がるとき、ふと、窓を見ました。
雲一つない晴天で、熱い日差しが部屋に差し込んでいました。
時間が巻き戻る体験はいまのところ、この一回だけです。
(ここから先は蛇足です)

そのあと、私は母にこの出来事を話しました。
すると、母も思い出したようにぽつりぽつりと語りはじめました。
母が私と同じくらいの頃、インコを飼っていた。
しかし、ある日の朝、インコが亡くなってしまった。
そのことが悲しくて、母は学校に行く気をなくしてしまった。
通学路の途中で近くにあった公園に自転車を止めて、ベンチで泣いた。
ずっと泣いて、泣き終わったあともぼーっとした。

気が付けば空がオレンジ色に染まり、公園の時計は4時。
母もようやく気が落ち着いて、もう学校も終わっていたので、家に帰った。
「ただいま」というと玄関にいた祖母が 「どうしたの?忘れもの?」 と、
ぽかんとした様子で聞いてきたので、「学校サボちゃった」といった。
「なにいってんの?まだ8時だから間に合うでしょ」
少しの間きょとんとし、部屋に行って時計を見ると30分ほどしか経っていなかった。

朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる

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