塩が嫌い

私の通っていた小学校には、一部の生徒だけでなく、
どちらかというと教職員の先生たちの間で広く知られている噂があります。
どの先生に尋ねても、妙に話が噛み合わなかったり、はぐらかされてしまっていましたが、
共通して言えるのは、どうやら教員用トイレがやばいというのと、
そこに女性の霊が出るらしい、ということです。
何人もの先生が別々に、それも一人でいるときに限って、
その教員用トイレから、髪の長い女性がスーッと、
扉を開けることなく、出たり入ったりしているのを見た、と言うらしいのです。
そして今からするのは、私が小学生の時に唯一、
とても仲の良かった栄養士の先生から聞くことができたお話です。

私の小学校は、建設の際に、山の斜面を切り崩して建てたということもあり、
構造が少し特殊で、 学校の入口から下駄箱を抜けると、すぐそこに体育館が広がっています。
その体育館を中心に、各学年ごとに全く違う通路を通り、全く違う階の教室に向かうことができます。
その体育館に面した廊下に、教員専用のトイレと、ちょうどその斜め向かいに、食堂があります。
自校給食である私の学校は、栄養士の先生と、調理員の方たちが、毎日その食堂の調理室で給食を作っています。

給食委員だった私は、各クラス毎の残飯料の調査や、食器返却の際にちゃんと片付けられているかなど、
当番の日は、他の生徒より早く給食を食べ終わって、その食堂に行かなければいけませんでした。
何度も当番が回ってくるごとに、栄養士の先生とも仲が良くなり、
その日は何気なくお化けなどの話になって、どうやらその先生にも少し霊感があるらしいということがわかりました。

そして私は、教員用トイレに出るらしい、という、あの噂について聞いてみることにしました。
すると先生は、髪の長い女の人幽霊を、その食堂でも度々見かけることがあるらしく、
「あの幽霊はね、塩が本当に嫌いなんだよ」と言いました。
どういうことかと尋ねると、先生が調味料を入れている棚を開けるときに、
何故か塩の入った袋だけが手前に落ちてくるらしいのです。
それも、一度だけではなく、しかもその塩が棚の手前にあろうと、奥にあろうと関係なく、
不自然に手前にポトっと落ちてくる、ということが、何度もあったと言うのです。
ある時は、しっかりと湿度と温度の管理が出来ているのにも関わらず、
買ってから2日もしないうちに、カチカチに固まって、使い物にならなくなってしまった、ということもあったらしいです。
極めつけは、前日仕入れた新品の塩に黒い塊のようなものを見つけ、
取り出してみると、人の長い真っ黒な髪の毛が、束になって出てきたらしく
、すぐに新しいものを買ってこなくてはいけなくなった、というものです。

それからというもの、塩だけ、使うその日その日に買ってくることになったそうです。
私は子どもながらに、良くできた話だな、と思いましたが、
その先生の困りきった顔を見ていると、どうも嘘をついているようには見えませんでした。
噂では、元々その体育館横に、学校を建設する際に、
どうしても解体しなければならないお墓があったらしいです。
直接それに関係しているのかは分かりませんが、幽霊が塩を嫌う、ということが私の中で立証された、そんなお話でした。

ちなみにこの話を打ち込んでいる際に、2度ほど端末が固まり、
再起動しなければならず、普段そんなことはありませんでしたので、諦めかけました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる

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