見てくれている?

随分前の話なのですが、投稿させてもらいます。

当時、学生だった時、自宅を大幅にリフォームする為に、両親は少し離れたアパートに間借りし、
私は、ペットの世話と、防犯対策という事で、一人寂しく、リフォーム中の実家の2階に残っておりました。
長期の工事という事と、当時、ものぐさ学生という事もあり、必要最低限の掃除やかたずけしかしてませんでした。

そんなある、夏休みの日、ずっと扉を閉めたままの仏壇が妙に気になり、久しぶりに戸を開け、
中を軽く清掃し、水と線香をあげて、見様見真似でお経をあげてみました。
今思うと、それが原因だったのかなぁと思います。
その日の夜、妙に寝苦しく、布団に入っても、いっこうに眠りがやってきませんでした。
何度目かの寝返りののち、ふと気が付くと、妙なきしみ音が聞こえてくるようになりました。
最初は地震でも起こったのかと思ったのですが、響き方からすると、足音の様な?
(地震…じゃないな?足音?って事は、泥棒か?勘弁してくれよぉ。)
等と考え、扉の方に寝返りをうち、身を起こそうとすると、なぜか、起こせない事に気が付きました。
動けない事にパニックになりつつも、近づいてくる足音、そして、扉を開ける音を聞きつつ、
焦る気を落ち着かせようと、どうすればいいのか、考えているうちに、隣の両親の部屋の扉があく音がしました。
(おいおい、次はここか?女の子ならともかく、男の寝室にやってくる奴がいるか?)
などと、あきらめの境地の考えが走りました。

そして、ゆっくりと扉があきました。
そこから覗いたのは、数年前に病死した祖父でした。
思考停止した私と、祖父は、完全に目があいました。 が、それだけでした。
また、あらわれたのと同じように、扉が閉まり、廊下を歩く足音、階段を下りる足音がしたと思いますが、
そこら辺で、私の記憶がなく、恐らく、寝たのだと思います。

次の日、この話を両親にしたところ、思いっきり笑われ、
現在でも、時々、笑い話として酒の席の話題になります。
そして、工事中はやめてもらっていた月参りのお坊様にその話をすると、
「あぁ、恐らく、久しぶりに仏壇が開いたと思ったら、お前ひとりだけだったから、
驚いて家の中を見て回ったんだろうな。見守ってくれてる証拠よ。気にするな。」
と、言われ、安心した覚えがあります。

…ただ、ずっと心に引っかかっている事があるんです。
あの時、扉から覗いた祖父の顔が、鬼に見えた事です。

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