真夜中の交差点で

姉のほんのり怖い体験談です。

ある日の夜11時頃、居酒屋でのバイト帰りの姉は、車を走らせていました。
細い路地から、広い国道に出るため交差点で信号待ちをしていると、
国道を挟んで反対側に「空車」の表示のタクシーがやってきて止まりました。
姉は何気なくそのタクシーを見ていると、不意にハザードランプと車内灯が点き運転手さんが少し後ろを向きました。
その姿は、車内に誰か乗り込んだ様に見えました。
はっきりとは見えませんでしたが、運転手さんは笑顔で対応していました。
こんな夜遅くに、タクシーを呼んだのか、たまたま通行人がいたのか分りませんが、
今から仕事か、大変だなぁ、と思ったそうです。

タクシーは室内灯と「空車」のランプが消え、やがて信号が青に変わりました。
姉は右に曲がりたかったので交差点の中心でタクシーを先に行かせようとしました。
ウインカーが点いてなかったので直進だと考えたのです。
ですが、タクシーは発車しようとしません。
姉はちょっとイライラしながら (ちょっと、早く行ってよ) と思っていると、
やっとハザードを消し交差点に入ってきて、姉の車とすれ違いました。
間もなく信号は黄色の点滅になり、姉は慌てて右に曲がりました。
(何なのよ。全く、もう) と思いながら、ある事に気がつきました。
一瞬の事なので記憶は曖昧でしたが、運転手さんの満面の笑顔と後部座席に3人の顔が見えていた様な気がしました。
(あんなに、人いたっけ・・・)
タクシーが停車していた側の道の両隣は、閉店した店舗の駐車場でしたが、
あたりは街灯と行き交う車の灯りで結構明るく3人もの人間がいたら記憶に残っているはずです。
でも、姉は3人どころか誰もいなかった様にすら思え、そう考えると運転手さんの笑顔が不気味に感じられました。
(何をあんなに喜んでいたんだろう・・・)
何とも言えない、薄気味悪さを首筋に感じながら、姉は帰途につきました。

翌日、私にその話をしてくれたのですが、
「あの運転手さん、あの後どうしたかな。あの3人生きてる人だったらいいんだけど・・・。」
そう不安そうに言っていました。

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