声真似

これは約10年前、あるアパレルに勤めていた時の話。

そのアパレルは大型で、早番、中番、遅番で常に15〜20人前後が働いていた。
ある日の朝出勤したら、バックヤードで同僚Aさんから声をかけられた。
「あ…◯◯(私)さん、おはよう」
「おはよう、Aさん」
「◯◯さんって、昨日は休みだったよね?」
「うん、昨日は公休だったよ?」
「だよね…」
急に声のトーンがさがり、表情が曇るAさん。
不思議に思い、どうしたの?と声をかけると、言いづらそうに話始めた。
「あのね、昨日オープン前の売り場の掃除で、ベビー売り場だったの。
それで掃除してたら、急に名前を呼ばれたから返事したの。
そしたら、周りの人がビックリして固まるし、私もその反応にビックリしたんだ」
目は伏せられ、顔色が青い。頷きながらゆっくり続きを促す。
「だって、昨日私を呼んでた声が◯◯さんの声だったから 「はーい、◯◯さん。どうしました?」 って返事したら、
周りの品出ししてたみんなから 「今日は◯◯さん休みだよ?」 って言われて、
Bさんが 「それより、何で急に◯◯さんを呼んだの?急に大声出すからビックリしたよ」 って笑いながら言われて、私がビックリして…」
私は聞き終わってAさんの小さな肩にポンポンと両手を置いて、精一杯の笑顔を向けて言った。
「そっか…それは怖かったね…。 でも、もう忘れちゃいなさい。気にしちゃダメだよ?
ただ、私が呼んだ時は無視しないでよ?寂しいし、連絡が通達出来ないの困るから」
それを聞いてAさんもぎこちなく笑い、精一杯の明るい声で返してきた。
「うん。任せて!」 それを聞いて、お互い笑いあった。

先にAさんが掃除に売り場に出て行くのを見送って、ふと開いていた店長室の方に視線を向けた。
店長室の椅子が誰もいないのに、誰かが座って立ち上がる時の様に キィ… と鳴って、静かに動いていた。
それを確認して、静かに店長室の扉を閉めた。
このお店はとある商業施設と共に新規オープン以来色々と起こっていて、私自身も様々な体験していました。
周りのスタッフも幾人か体験をしている方の話を聞く事はありました。
その場に居なかった人の声を真似て、人に呼びかけるタイプはなかなか遭遇しなかったので記憶に残っています。
土地柄的に元々墓地だった…、工事中に地元の人や入る店舗と色々あった…、
良くある色々な噂は一通り立ち、田舎だった地元を賑わせました。
新規オープンなのでそのお店で事件・事故等はないのに、心霊現象は普通に起こっています。

心霊現象は利用する人々の思念等で引き起こされているのかと考えさせられます。
それは仕事場、学校や駅、道路や家…普段使っている場所に大勢使っていて、
その場に色々な『想い』が蓄積されていってそれが『現象』を引き起こすキッカケになっているかもしれません。
人の『思う力』は良くも悪くも『強いモノ』です。

朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる
朗読: 思わず..涙。

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