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事故物件

あまり怖くないかもしれませんが、不思議な体験をしたので投稿致します。

これは私が不動産会社で賃貸営業をしていた時の体験です。
賃貸物件には所謂事故物件と言うものがあります。
そこで何か事故や事件があった場合は次の借主に話すことになっています。
孤独死や自殺も事故物件扱いです。ただ、次の次の借主には基本言いません。
霊感の強い私は社内でも特別扱いと言うか、そういう事故物件の内見案内から外して貰えていました。

そんなある日、上司から電話があり内見案内を頼まれました。
埼玉県のT市の駅付近にあるアパートです。
その時、上司からは「絶対に中には入るなよ。お前は外で待ってろ。いいな、これ事故物件だから絶対に中に入るなよ」と強く言われました。
聞くと、客からその物件が見たいとオフィスに電話があったそうです。
私は新築アパートの下見と大家さんに挨拶をしに外出していました。
営業担当者が皆出払っているので後日にしてほしい旨を伝えたのですが、客は頑として今日見たいとの事でした。
しかもアパートの前で待っているとの事。
いろんな営業担当者に掛け合ったけど、誰も皆、内見案内に出ていて手が足りないので、しかたなく私に電話して来たのでした。
私はすぐに現地に向かう為に池袋駅から電車に乗りました。
「事故物件?どんな事故なんだよ~」と内心不安でした。
営業がそちらに行くのに1時間かかると上司はその客に大袈裟に言ったそうですが、
それでも一向に構わないと言う客は相当早く部屋を決めたいんだなと思い、
その物件もすぐ決まるだろうとポジティブな気持ちもありました。

駅に着き、地図を片手に歩いていくと徒歩3分位の立地の良い場所にそのアパートはありました。
ロフト付きの2階建て木造アパートです。
外壁が紫色と言う一風変わった造りではありました。
アパートの前に30代前半の男性が立っていました。
私を見ると嬉しそうに「早速中を見せてください」と言ってきたので、
鍵を開けて男性を中に入るよう促して外に立っていました。
玄関は凄く小さくすぐ横に一口コンロと小さなシンクが設置されていました。
外見からすると玄関と台所が一体化してる造りが不自然に感じました。
もっと広い部屋のイメージがあるんです。
すると男性が笑顔で「凄く良い部屋ですよ。貴方も見てください。中に入って!」と私を呼ぶのです。
丁重にお断りしたのですが、男性は外に出て来て私の腕を掴むと強引に部屋の中に引っ張っていきました。
実は不動産の内見案内で気を付けないといけないのは事故物件より、男性と二人っきりで部屋に入らない事なんです。
連れ込まれて乱暴された女性の事件が多数あり、私もそれは気を付けており、
その時の男性の様子から暴行される事を心配して後ずさりしたんですが、
私が玄関を上がるのを見ると男性は部屋の奥へと入って行ったので、
距離を取って部屋の入口に立って部屋を見渡しました。

2階建ての1階部分ではあるけど、天井が高く10畳のワンルームといったところで、
壁紙も洒落ていて男性より女性向きの部屋だなと個人的に思ったのを覚えてます。
男性は窓の外を見ていたので、1歩進んで部屋に入りました。
そしてロフト部分を見て息が止まりました。
そこには壁に大きく女性の顔が描かれていたのです。
目は大きく見開かれており、口を半開きにした何とも不気味な絵です。
多分、私は口をあんぐりと開けたままそれを凝視してたのでしょう。
ふと気づくと男性が傍にいました。
そして「貴方にも見えるんですね」と言うとニコっと笑って部屋を出て行ったのです。
もう一度壁を見ると、そこには女性の絵はありませんでした。
慌てて男性の後を追うように部屋を出ようとしたときに、
目の端にロフトのパイプにぶら下がってゆらゆらと動いてる影がチラっと見えました。
靴の踵(かかと)を踏んだままで外へ出ると男性は大きな伸びをして立っていました。
私が近づくと「今日はこんな遠くまでご足労頂き有難うございました」と深々と頭を下げると、
まだ唖然とした私を置いてさっさと歩いて行きました。
慌てて部屋に鍵をして後を追いかけると男性は「他に見たい物件があるので」と言い、
駅とは反対の方向へ歩いて行ってしまいました。

オフィスに帰り、この事を上司に報告すると
「契約は無いな。でもそいつ絶対に怪しいなあ」と苦笑いしてましたが、
あの男性は一体何が目的で、あの部屋でのあの光景を私同様見えていたのに
笑顔だったのは何だったのだろうといろいろ不思議でした。
ちなみに、その部屋で何があったのか聞いたところ、
数年前に若い女性がロフトのパイプにロープをかけて首つり自殺をしていて、数日後に職場の同僚に発見されたとの事です。
それ以降、いろんな人が入居しては退去を繰り返すようになっていたとの事。

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