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私の地元はそれはそれは大きな山々に囲まれている。

 そんな中で、山がキラキラと輝くことがある。
空気が輝くとでもいうのだろうか。
山がうっすらと神々しい光に包まれ、そしてフッと何事もなかったかのようにいつもの山へと姿を戻すのである。

 幼いながらに何故だかそれはとても心惹かれるものがあった。
じっとその姿を見ているとバラバラと耳障りな羽音が近づいて来て、そして頭の上を県警のヘリが飛んで行く。

 山が光る日は大体、遭難事故が起こる。
それは私の周りでの暗黙の了解だった。
浮かない顔で空を見上げる父と近所の人たち。
ヘリが見えなくなるとそれぞれの仕事に戻る大人たちを見送りながら私は庭で犬と遊んだ。

 山は美しい、だけれども残酷。故に、人の心を掴んではなさず、畏怖の対象となる。

 駅の待合室に飾られたポスターの中で、田んぼの真ん中で山に向かって手を合わせるおばあさんにどこか居心地の悪いものを覚えながら今の私はいつも地元から帰るのである。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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