かんのむし

これはボクがまだ幼い子供時代に実際に体験したことなのだが、 あまりに昔すぎて詳細はよく思い出せない。

ある日、テレビを見ていて「かんのむし」を出すことができるという番組をやっていた。
疳の虫とはよく赤ちゃんがぐずったときに言うセリフであって、
本当に虫がいるわけではないのだが、それを出せるというのだ。
やり方は、濡れ手にたっぷりと塩をもみ込んで、
そのまま30秒間ほど力いっぱい 握りこぶしを作るというもの。力いっぱいだ。
そしてパッと指を広げると、やがて爪の間から細くて白い虫が出てくるのだという。
それが「かんのむし」なのだとか。

子供だったボクはそれを見て「そんなバカなことってあるかよ~」と言いながら、 やってみることにした。
果たして・・・・ 指を広げてみると、
なんと、爪の間からニョロニョロと、細い糸のようなものが みるみる伸びてくるではないか。
虫・・・には見えなかった。
まるで半透明な糸のようなものがだんだん伸びてきたのである。
ボクは怖くなって水道の水でそれを全部流してしまった。

それから数年後・・・・少しだけ成長したボクは、あの時の事はやっぱり夢か幻、 思い過ごしに違いないと思い、
再び同じ方法にチャレンジしてみることにした。確かめたかったのである。
そして・・・・再び爪の間から細い糸のようなものがニョロニョロと出たのである。
ボクはもうそれ以来、怖くて二度と同じ実験はすまいと心に決めたのだった。

朗読: 思わず..涙。

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