いわくつきのトンネル

これは、わたしが高校2年生の頃のお話です。

その頃私はよく、放課後にとある広い公園に友達5人で集まり、他愛もない話をすることが多くなっていました。
その日も友達といいつもの公園に集まり、いわゆる恋バナというやつをしていたのですが、
盛り上がりすぎて声が大きくなってしまい、近所の人に警察を呼ばれ、怒られてしまいました。
そのときになって気づいたのですが、時間は夜の9時30分を過ぎており、
早く帰らなければ深夜徘徊で補導されてしまうと思ったのですが、このまま素直に帰るのもつまらないと思い、
友人の一人であるm君の家に泊まりに行こうということになりました。
ですが、m君の家はいつも通りの道を通っていけば1時間ほどかかってしまうところにありました。
すると友人の一人が「ちょっと怖いけどさ、もうあのトンネル通っていくしかないんじゃない?」といいました。

そのトンネルというのが、私の地元では有名な心霊スポットなのです。
ただそういわれているだけではなく、そのトンネルが心霊スポットといわれる原因がちゃんとあるのです。
それは、そのトンネルが墓地の下に作られているということです。
墓地の下に作られているせいか、そのトンネルを通った人はよく、不思議な現象に見舞われており、
いつしかそのトンネルは有名な心霊スポットとして名を広めていきました。
少し言い合いはありましたが、話がまとまり、そのトンネルを通っていくことになりました。
結論としては、「幽霊も怖いけど、警察に補導されるほうがもっと怖い」ということです。

トンネルまでの道中、気を紛らわそうと、いつもより大きな声で他愛もない話をしていました。
そして、とうとう件(くだん)のトンネルの前に着いてしまいました。
改めて不気味さを感じながらも、時間がどんどん過ぎていることもあり、さっさと中に入りました。
自転車で立ちこぎをして、急いで通り抜けようとしました。
そして、意外と何事もなくトンネルを抜けることができました。
みんなホッとしたのか口々に「なんだよ、たいしたことないな」
「ビビってるやつらが勘違いしただけだろ?」なんて強がりを言いあいました。
トンネルを抜けた先に、公衆電話があるのですが、地元の人間の中では有名な話で、
その公衆電話は壊れており、夜になっても明りはつかないはずなのです。
ですが、その時だけは、なぜか公衆電話の明りがチカチカと点滅していました。
その現象に少し不気味さを感じながらも、みんなでそのまま坂道を下り、m君の家に急ぎました。

無事m君の家に到着し、みんな完全に気が抜けたのか、お菓子やジュースを飲み食いしながら笑い話をしていました。
誰もが先ほどのトンネルのことなど忘れていた時、その現象は起こりました。
友人の一人であるn君の携帯に、公衆電話から着信が来たのです。
それまでの明るい雰囲気は凍り付き、みんなn君の携帯に目を向けていました。
するとn君が携帯をマナーモードにして、きっと勘違いだよ、と明るい表情で誤魔化し、携帯の画面を裏向きにしました。
私はそのn君の様子に違和感を抱きながらも、周りの雰囲気に合わせ、話をつづけました。
時間は過ぎ、深夜の2時30分を過ぎたころ、ふと、n君の携帯が気になった私は、
こっそり裏向けにしてあったn君の携帯を表向きにして、画面を見ました。
鳥肌が立ちました。公衆電話からの着信が、まだ続いていたのです。
その様子に気が付いたn君が携帯の電源を切り、しばらくの沈黙の後、ゆっくりと昔話をしてくれました。

n君曰く、3年前、n君がまだ中学2年生の頃、件のトンネルに肝試しに行ったことがあったそうです。
その時はn君と友人2人の計3名で行ったらしく、入り口で1人が待っており、
じゃんけんに負けた残り2人がトンネルを往復して戻ってくるというものでした。
片道を通り終え、二人が入ってきた方向に戻ろうとしたとき、n君の横にいた友人が止まったそうです。
友人を横目に、「どうした?」と聞くと、
その友人は「自転車が重すぎてこげない、荷台になんか乗ってる」と青ざめた表情で言いました。
さすがにその友人の自転車の荷台を見る勇気がなかったn君は、その自転車捨てて、
俺の荷台に乗れ、と言い、そのままトンネルを脱出しました。

その日の夜、その友人の家で奇妙な現象が起きたそうです。
友人がトイレに行き、自分の部屋に戻ってくると、部屋が荒らされており、
そのあと間もなく携帯に公衆電話から着信が来たとのことです。
友人はその着信に応じてしまいました。
電話の先から聞こえてきたのは、「キー、キー」というさびた金属のような音だったそうです。
n君の友人はなぜかそれが乗り捨ててきた自転車のペダルの音だと理解し、慌てて電話を切ったそうです。
そして後日、その友人は高熱を出し、学校を休んだそうです。

n君が話してくれた昔話は以上になります。
その話が終わった後、部屋の中の空気は凍り付き、
その雰囲気に耐えられなくなった私とm君とn君は気晴らしがてらコンビニに行くことにしました。
コンビニの道中、n君が「まあ、電話には出てないし、大丈夫だよ」と言いました。
コンビニから帰ると、なにやら2階の部屋が騒がしいことに気が付きました。
なにを騒いでいるんだろうと思い、2階に行き、部屋の扉を開けた瞬間、音が止まりました。
そして、残っていた友人2人は、寝ていました。
一体、誰が騒いでいたのかはわかりませんが、
電話に出なかったからと言って、安心できるわけではないのだなと、なぜか冷静に感じた自分がいたことを今でも覚えています。

休み明け、学校に行くと、m君がいないことに気が付きました。
担任の先生に聞くと、高熱を出して休んでいるとのことでした。
授業が終わった後、m君の家にお見舞いに行き、話を聞くと、
m君の部屋の押し入れから時々、不自然な物音がするとのことです。
m君の部屋に何かを持ち帰ってしまったのかと、少し罪悪感にかられました。

家に帰った私は、そのことを父親に話してみました。
すると父親は「ああ、あのトンネルね、あそこは確かに有名だよ、
お母さんが言うには、霊感のある人が見れば、
血まみれの老婆が公衆電話の隣に三角座りしているのが見えるらしい」と話してくれました。
聞かなきゃよかったと、激しく後悔しました。

以上が私が体験した怖い話になります。
みなさんも、遊び半分で心霊スポットなんかにはいかないように気を付けてください。

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