探している怪談または修学旅行の怪談

ずっと探している怪談がある。
聞いたのは私が小学生の頃だから、もう30年近く前。
正確に覚えているわけではないけれど、若者達が廃墟に行くというよくある話だった。

廃墟に行った彼等はそこに閉じ込められてしまう。
たまたま入った部屋の物音に驚き出口に殺到。するとドアが開かないのだ。
こうなるともうパニックである。
必死にドアノブをガチャガチャと回す。開かない。
慌てた彼等は窓から脱出を試みる。
一人二人と上手く逃げたが、最後の一人がいつまで経っても出て来なかった。
走って現場から逃げた二人は心配になり、恐る恐る残る一人を探しに戻る。
と、そこには窓からぶら下がる、窓ガラスに首が刺さり亡くなっている友人の死体があった……そんな怪談だったと思う。

この話のオチとして
「開かなかったドア、実は開かないわけじゃなくて、引くドアを押していたからなんだ。パニックになる事が一番怖い事だ」
と先生は笑って付け加えた。
そう、この怪談を話してくれたのは小学校の先生。
話を聞いたのは修学旅行の夜。
聞いた時は「いやいや、最後怖くない感じで終わらせようとしてるけど怖いから。そこ笑う所じゃないから」
と思ったのを今でも覚えているし、ドアは押してダメならちゃんと引いてみようとも思った。

で、何でこの怪談を探しているのかと言うと、
その時代はまだネットが普及していなかったからネット怪談なんてのはなかった。
だからこの怪談の出所が気になったのだ。
実際にあった事件を元にしているのか、作り話なのか?
有名な怪談なのか、それとも先生の創作なのか?
それと「昨日の夜の先生の怪談凄かったね」と友達に言ったところ、
みんなに「怪談? そんなのあったっけ?」と言われたのだ。
先生が笑いながら怪談を話している姿も話の内容も私は記憶している。
しかし、夜に先生が部屋に来て怪談を話してくれた……なんて事はなかったらしい。
「真っ先に寝てたじゃん」そう言われた。

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