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白い彼岸花

もう10年程前になります。

その頃はまだ、シェル型の携帯電話、いわゆるガラケーが主流でした。
社会人数年目のわたしは、プリペイド式の携帯電話からカメラ付き携帯電話に変えたばかりで、
デジカメほどきれいに撮れなくても手軽に気に入ったものを収めることができる機能を楽しんでいました。

ある秋の日、ショッピングセンターの近くの土手を散策していると、河川敷に白い彼岸花を見つけました。
わたしは、初めてみる白い彼岸花を珍しく思い、携帯のカメラに収めようと近寄りシャッターボタンを押しました。
「あれ?」
何回押してもシャッターが反応しません。
「フリーズしちゃったのかな?」
携帯を再起動して、改めてカメラを起動してシャッターボタンを押しました。
何度押してもやっぱりシャッター音がせず、写真は撮れませんでした。

SDカードがいっぱいになってしまったのか、とも考え、古い写真をいくつか削除して、もう一度チャレンジ。
・・・シャッターは反応しませんでした。
「ちぇっ、今日は携帯の調子悪いのか。残念」
河川敷から上がってから、白い彼岸花ではない他の被写体にカメラを向けると
「パシャリ」
シャッター音がして、写真が撮れました。
「直った?やった!」
もう一度河川敷に降りて、白い彼岸花にカメラを向けてシャッターを押します。
やっぱり音がしません。
そこに行くと、どうしても写真が撮れないんです。

だんだん怖くなり、諦めてその場を後にしました。
今になっても、そのことは理解の及ばない、不思議なことだったと記憶に残っています。
関係があるかは分かりませんが、その近くには昔、軍需工場がありました。
そして、空襲によってそこで動員されていた多くの学生が命を落とされたそうです。
毎年、地元ではその日に慰霊祭が行われています。

朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる

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