これは私の両親が体験した話です。
私の母はかなり霊感が強く、幼い頃から数多くの心霊体験をしてきたと聞きます。
その体験した中で1番怖かった、というか経験した心霊体験の中で1番「死を覚悟した」という話です。
以後母のことを「私」、父のことを「H」と表記します。
私がまだH(父)と付き合いたての頃、某県の山道を車で走行していた時の話です。
私たちはかなりのアウトドア派で、サーフィンやキャンプなど2人で車を出しては旅を楽しんでいました。
関西に住んでいた私たちは四国や九州まで車にテントとサーフボードなどを積んで夜道を車でとばすことが多かったのです。
その当時、高速道路がお盆の帰省ラッシュでかなり混んでいて、下道行き山道を経由して家に帰るという計画でした。
特にHは周辺の地理に詳しく山道走行もお手の物で安心して帰れる予定でした。
ある山の中を走行中、私はいつもながら助手席で寝ていましたがなんか嫌な感じがして起きてしまいした。
霊感あるあるというのか分かりませんが、いわゆる「この辺なんか出そう」みたいなのを感じ取ったのです。
Hは私が霊感が強いのを知っていたので、「なんか気持ち悪いから気をつけて走ってね」とHに注意しました。
嫌な予感はするがとくになにもないまま山を走行するうちに、強い霊気を感じる場所は過ぎたように感じました。
私は一息つきHに「なんか過ぎたみたい、だいぶ楽になった」と告げて、Hが「それは良かった、一応車に塩積んどるから使いな」って冗談交じりで会話が進んだ矢先でした。
私は急に悪寒を感じ身を硬くしてしまったのです。
“何かが追ってきてる”と咄嗟に感じました。
その何かというのはみんなが想像するいわゆる“人の形の幽霊”というより“巨大な負の感情の塊”という方が正しいかも知れません。
敢えて形を想像させるなら、もののけ姫に出てくる祟り神。あのドス黒くウネウネした巨大な塊。
何十、何百という悪い霊がくっついて大きく膨れ上がった怨念、とでもいうものだろうか。その怨念が私たちを追ってきてる。
しかも車の速さに追いつかんとばかりに。
それを感じ取った瞬間私は「とばして!」とHに告げました。
Hは「やばい?」と呑気に言うが「それどころやない!死ぬ!」と顔面蒼白の私をみてやっと現状を理解したのか山道をかっ飛ばすH。
少しでもあの塊に呑み込まれるものなら、幸せという感情を全て失いそうという恐怖とその呪いかなにかによって殺されると言う死の圧が私たちを襲い続けました。
山道で車をとばしたのか、かなりの揺れの中私たちは麓まで降りることができ、その塊からも逃れることができました。
後で調べたことなのですが、昔あの山には結核の患者を収監する病棟があったらしいのです。
その当時結核は不治の病とされ、苦しみながら死を待つだけの患者が数多くその施設に寝かされていたというのです。
その者たちの生への執着心というか、生きてる私たちへの無差別な攻撃心・嫉妬心などがあんな形となって現れたのだと思います。
最後に、これは当時Hには言ってませんでしたが、
車の後ろのバンパーや後輪のホイールが、明らか人の力ではつかないであろう力で大きく歪んでいました。
山道でのあれらの揺れは単なる悪走行による揺れではなかったみたいなのです。
以上が私の両親が体験した話でした。
母曰く、目に見えるだけで何もしない霊はマシ、だそうです。