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予兆

私が頻繁に幽霊やお化けを見ていた中学生の頃。

夜にぼんやりと空を眺めていたら、月が緋い。
真っ赤でもなく朱色でもない。緋い。
その色を認識した瞬間、背筋に氷の柱を押し付けられたような言い様のない寒気を感じ、急いでカーテンを閉めて机に戻る。

胸がザワザワして落ち着かないままに布団に潜り、ぼぅと開け放した廊下を眺めている時にそれは起こった。
廊下に ナニカ が浮かんでいる。よく見ると右手。
血にまみれた右手が、鮮血をポタポタと廊下、畳に滴らせ、どんどん目の前に迫ってくる。
無言で身を起こし、後ろ手に下がろうとした格好で全身が硬直して動けない。
手の大きさも最初に見た時は15cmあるかどうかだったのが、近づいてくると当時の私の顔を覆う程の大きさになっている。
その手が自分の顔に触れるか触れないのギリギリのところで、目の前の血の匂いがあった手がふっと掻き消えた。
心臓があり得ない程の速さで血液を全身に送っていく。
呼吸が浅く早くなっていて、寒気と恐怖感で全身鳥肌が立っている。
気がつけば金縛が解け、動かせる。
視線を部屋に這わせると、さっきまであったはずの血の跡が1つもない。
無言で布団を被り、震えながら眠りについた。

その早朝、身体を揺らされて目が覚めた。
ん?と思っていると、それは地震だった。
そう、あの『阪神淡路大震災』の日。
私の住んでいる地域は震度4で家具の転倒とかはなく、「揺れたね〜」で終わったが、ニュースをつけて言葉を失った。
あの惨劇を見て咄嗟に昨夜の『月と手』を思い出し、3度寒気を覚えた。

10数年後、ある『女性』に上記の出来事を語った時にこう言われた。
「その『月も手』も『あの震災の予兆』だったんだね。
◯◯ちゃん(私)は当時霊的なチャンネルが開いていたから、その震災で亡くなった人が時間を超えて、
『血にまみれた手』という形で現れたんだよ。」
「でも、私に言われても何も出来ないよ?」
「それでも、『視える人』に伝えたかったんだよ。理不尽な死を。無念を。後悔を‥」
そう言われて何も言えず、顔を伏せるしか出来なかった。
「視えるって、辛いね‥。お互いに」
そう言って淋しそうな笑顔でこっちを見た女性は、頭をポンポンしてお店に戻って行った。

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