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流れるはずがない

私は社会人になってから友人と疎遠になってしまい、
新しく友人を作ろうとネットを介して知り合ったAさんとメールでやり取りをしていました。
私が怖い話が好きだということもあり、Aさんは幼い頃の恐怖体験を教えてくれました。

3人兄妹の真ん中であるAさん。
ある日両親に頼まれ、兄妹3人で家で留守番をすることになりました。
テレビゲームをしたり、ままごとをしたりと楽しい時間はあっという間に過ぎていき、いつしか日が傾き始めていました。
部屋の明かりをつけるためにスイッチに触れようとしたとき、Aさんはある事に気が付きました。
スイッチに血がついていたのです。
両親が出かけたあと見たときには付いていなかったため、兄か妹が怪我をしたものだと思い、
2人にどこか怪我をしていないか急いで確認しました。
しかし、Aさんを含めどこも怪我をしていません。
血だと思ったのは何かの塗料だったと、その時は考えることにしたそうです。

しかし、その後も不可解な出来事は続きました。
誰もいるはずのない2階からパタパタと足音が聞こえ、終いには先ほどつけた部屋の電気が急に消えてしまいました。
ブレーカーが落ちてしまったのかと、電気系統が備え付けられている場所へ向かおうとしたとき、Aさんは思わず立ち止まってしまいました。
テレビがついているのです。
ブレーカーが落ちてしまったのであれば、テレビの電源も落ちているはずです。
しかもその時は3人一緒に遊んでいたため、誰も電気のスイッチに触れていないのは明確でした。
さすがに恐怖が頂点に達したのか、妹は泣き出してしまいました。

と、その時。
家の電話が突然、プルルルルと鳴り出しました。
ですが呼び出し音がおかしいのです。
その時ながれていた曲は、電話に登録されていないはずの『聖者の行進』という音楽でした。
さすがにAさんも恐ろしく思いましたが、両親だといけないと考え、勇気を出して受話器をとり耳に当てました。
しかし受話器から声は聞こえず、ただザザザとノイズが聞こえてくるばかりでした。
受話器を置いたときにちょうど玄関の扉が開き、Aさんの両親が帰ってきました。
『電気もつけないでどうしたの?』と心配され、
Aさんもお兄さんも緊張した気持ちが一気に解放されて泣き出してしまいました。

その日は3人とも疲れてすぐに寝てしまったことと、
不可解な出来事がその日限りだったことから次第に忘れていきました。
Aさんが私にこの話をすることを機に電話から流れ出した
『聖者の行進』という曲について調べて、その曲の詳細を知ってゾッとしたそうです。
『良かったら調べてみてください』と、メールの最後には記されていました。

そのメールを読んでからすぐに私も調べて恐怖を感じたことを覚えています。
Aさんにこのエピソードについての感想や曲について調べたこと、
その他にもいつも話していた他愛無い話を書いて送りました。
ですが、いくら返信を待ってもあの日以来、Aさんからメールの返信が来ることはありませんでした。
タイミングがタイミングだけに恐怖が拭いきれません。
Aさんの身に何も異変が起きていませんように。 それだけを願うばかりです。

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