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足が濡れてた話

とある田舎のスナックで隣の席になった男性に聞いた話。

「怖い話を聞くのが好きなんですが、おばけとか見たことありますか?」
酔っ払って意気投合して一緒に飲んでいた50代のその男性に切り出すと、
「おお、あるある。怖いぞー。」 というのでワクワクしながらお願いしますというと
「あのな、山の上にほら、戦争の飛行機飾ってるだろ?高校のときみんなで行ったんだよ。
写真とりに。そしたら足がぐっしょり濡れてたんだよ。写真見たら濡れてたんだよ。怖いだろ?」
だいぶ呂律が回らない中、ご機嫌に話してくれたのだが、さっぱり意味がわからない。 あと、怖くない。
「えーっと、まってください。ちょっと整理させてくださいね…」
そこから私の聞き取り調査の結果まとめた話はこんなものだった。

その田舎町には、太平洋戦争末期に使用された戦闘機が保管された展示館があるそうだ。
なんでも、その近くの湾に沈んでいたものを引き上げたもので、大変貴重なものだという。
「しかも、あれ引き上げるときにテレビ局の取材にきていたセスナが落ちて、死人も出たんだよね」
同席していた別の男性が補足してくれた。
これは後日調べたら事実だった。
戦争の遺物、しかも死人も出た曰く付き。
そんなわけで、高校生だったその男性は男友達と連れ立って6人で肝試しがてらそれを見に行ったのだという。

町から少し離れた、山の上にあるその建物まで自転車で向かった。
到着すると展示してある戦闘機を見物し、掲示してある説明文を読んだり写真をとったりしたが、
それ以上することもなくて最後にみんなで記念撮影をして、麓の町まで帰ったのだという。
町について、さあ、これからなにをして遊ぼうか、となったとき誰かが気づいた。
「あれ?おまえ、足どうしたの?」
「ん?え?なにこれ!」
「あれ、俺もじゃん!」
「あ!おれもだ!」
全員、ズボンの膝から下がぐっしょりと濡れていたのだった。
「なんで?なんかしたっけ?」
「昼は濡れてなかったよな」
全員で考えてみたが、川や海には寄ってないし、雨も降ってない。
数日晴れていたため水たまりもなかった。
溝におちた記憶もないし、道端の草の露だと考えるにはあまりにぐっしょり濡れている。
しかも、いつから濡れていたのか、皆はっきりわからないというのだ。
ただ、展示館では濡れてなかったというのは皆共通の認識としてあったという。
だから、帰り道のどこかで、どういうわけか濡らしてしまったのだろう、ということになった。
高校生男子はあっけらかんとしているもので、服さえ乾けばどうでも良くなってしまったそうだ。

そして、後日その時の写真を現像したものをみて驚いたのだという。
館内を見て回っている写真ではなんともないのに、最後に展示館の外で全員でとった記念写真では、全員の膝から下が濡れていたのだ。
「な?こわいだろ?」
なぜか得意そうに男性が言うので、
「はぁ、そうですね。不思議な話ですねぇ。」
と返しながら、私は思った。
(怪談って、話し方、超大事…)

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