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意識がワープする

十数年以上も前の話だ。
記憶では、結婚して実家に同居し始めた頃だったと思う。
二階部分は私たち夫婦が自由に使わせてもらっていて、その日の夜は茶の間にしていた部屋で一人仕事の書類を打っていた。
そして起こった、なんの前触れもなく、あまりにも突然だった。

画面を見ていた状態から、一気に意識が持っていかれる。
それも凄いスピードで。グワーっと。SFなんかである、ワープする感じだ。
何だこれ!何が起きてんだ!としばらくパニクってるうちに、急にピタッと止まった。

目の前にブランコがある、向かって左側には女の子、右側には男の子がキーコ-キーコと乗っている。
女の子は小学校の4、5年、男の子は2、3年生くらいだろう。
すぐに兄弟だなとわかった。 周りを見渡すと、遊具もほとんどない簡素な公園。
ブランコの後ろは斜面で、上の方に社殿らしき建物の横側が見える。
時間は夕方だ。ここは一体どこなんだ、また兄弟の方を見る。
女の子と目があった。 一瞬だった、女の子の顔がグワッと変わった。
まるで般若の面のようだ。
私は驚いて、ウワッと心で叫んだ、同時にまた意識が持っていかれる。

気がつくと、長い階段の上にいて、したを見下ろしている。
ずーっと下の方に、大きな赤い鳥居があり、その向こうには海が広がっていた。
気持ちの良い青空で、水面も光っている。
しばらく眺めて、私は階段を降り始めた。 ちょうど半分くらい降りたあたりで、階段の端に男の子の靴が片方落ちているのを見つけた。
わきの草むらには、誰かが入った形跡がある。
私は行ってみることにした。
しばらく草をかき分けていくと、今度は林の中に入った、少し先に小さな池のようなものが見える、嫌な予感がした。
近づいていくと予感は的中、男の子がうつ伏せで水に浮いていた。
この子は明らかにブランコに乗っていた、あの男の子だった。
怖いような、悲しいような、寂しいような、なんとも言えない気持ちになって、静かに手を合わせた。
瞬間、逆ワープだ。グワーっと引き戻される。ピタッと止まる。
目の前には、パソコン。戻った。なんとも、やり切れない気持ちだけが残っている。

ここからがやばかった!全身の毛穴が開いた!いる、間違いなくいる。
二間続きの隣の部屋の押し入れの前、見えないがいる。感じる。
恐怖で固まったまま動けない。どうしよう。
そうこうしているうちに、階段を上がってくる音がする。妻だ。早く来てくれ。
ガラッと戸が空いた。
妻が入ってくるなり、この部屋寒っ。
私は、早口でここまでの経緯を話した。
妻は至って冷静で、たしかにいるねー、何て言っている。 どうしたらいいと聞くと、子供だから賛美歌でもかけてみるかと、CDを探して始めた。
私は頭がはてな?で、なんで子供は讃美歌なの、賛美歌で除霊できるの、クリスチャンじゃないし、次々質問。
妻の返答は、なんとなく。
そのうち讃美歌が流れはじた、曲名も何番かも知らないが。主よ 御許に近づかん、て聞いたことあるやつ。
こんな適当な除霊だけど、いや除霊じゃないか、鎮魂と言えばいいのか、曲が終わる頃には、スッカリ部屋の空気は戻っていた。

あとで、冷静になって考えたが、さっぱり分からない。
あれは現実あった事件なのか、もしそうだとしても、なぜ縁もゆかりもない私が見せられたのか、しかもあのタイミングで。
今となっても、まったくもって分からない。謎だ。

朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる

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