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罪滅ぼし

この話を投稿するか迷いましたが、供養の意味も込めて投稿いたします。

「夢に殺されるかもしれない」 交通事故にあった友人のお見舞いに行ったとき、暗い顔で彼は語った。
事故にあう二週間ほど前から毎日同じ夢を見るようになったそうだ。
自室のベットで目が覚める。なんとなくこれは夢だとわかったらしい。
現実と同じように別途から起きて顔を洗い、朝食を食べてから身支度を整えて会社まで徒歩で出勤する。
交差点でスマホを見ながら信号待ちをしていると、不意に後ろから
「早く行けよ」
と声がした。
信号が変わっているのに動かないから急かされたのだと思い、慌てて歩き出しながら顔を上げた。
信号は赤のままだった。 その瞬間けたたましいクラクションの音が聞こえた。
身体が跳ね飛ばされる。
周りの景色がスローモーションのように映り、後ろから声をかけてきたやつの顔が見えた。
自殺した、元彼女だった。
自殺の原因は友人の浮気であった。
そこでいつも目が覚めて飛び起きるらしい。

そんな夢を見続けていてノイローゼ気味になり、夜にベットで眠るのが怖くなった。
ソファーに横になり睡眠導入剤やお酒に頼らないと眠れなくなっていたそうだ。
自室のベットの上で目が覚める。またあの夢だ。
起き上がろうとしたが頭がくらくらする。
すぐにでも目が覚めたかったので無理やり体を起こし、家を飛び出してあの交差点へ向かった。
今回は先に何人か信号待ちをしていた。
そんなことなどお構いなしにその人たちを押しのけ道路に飛び出した。
けたたましいクラクションの音。体が宙に舞う感覚。そこで意識を失った。
「目が覚めたら病院のベットの上だったよ。あの日は夢じゃなかったんだ」
私は何も返す言葉が見つからなかった。

それから数か月後、入院していた友人から久しぶりに連絡が来た。
「心配かけたな。無事に退院出来たよ」
それならよかった。快気祝いに食事に誘ったが
「ありがとう。でも、彼女のところに行ってくるよ。罪滅ぼしというか、こういうことしか出来ないけどさ」
自殺した元彼女の墓参りに行くらしい。

数日後、彼の家族から電話があった。
彼の訃報だった。
墓参りに行ったその日に、ビルから飛び降りたそうだ。
彼の葬儀の最中に警察が来て、いくつか質問された。
女性関係でトラブルがなかったか。
恨まれるようなことがあったかどうか。
なぜそのようなことを聞くのかと尋ねると、自殺の目撃者がその飛び降りてきたビルの上で彼を見ている女性の人影をみたらしい。
「彼女のところに行ってくるよ」そういった彼の言葉を思い出した。
その日は彼女の月命日だった。

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